現代アフリカ文庫:アフリカ・リミックス 多様化するアフリカの現代美術

書名:アフリカ・リミックス 多様化するアフリカの現代美術 AFRICA REMIX: Contemporary Art of a Continent
発行年:2006
発行:森美術館
種類:展覧会図録
言語:日本語
会場・開催期日:
森美術館 2006年5月27日−8月31日
クンスト・パラスト美術館(デュッセルドルフ、ドイツ) 2004年7月24日―11月7日
ヘイワード・ギャラリー(ロンドン、イギリス) 2005年2月10日―4月17日
ポンピドゥー・センター 国立近代美術館(パリ、フランス) 2005年5月24日―8月8日
ストックホルム近代美術館(ストックホルム、スウェーデン) 2006年10月14日―2007年1月14日(注1)
ヨハネスブルグ・アート・ギャラリー(ヨハネスブルグ、南アフリカ共和国) 2007年6月24日―9月30日(注2)

25カ国総勢84名のアーティストを展示した国際巡回展の東京会場カタログ。日本では東京・森美術館にて開催。チーフ・キュレーターはシモン・ンジャミ(Simon Njami)、日本展監修は国立民族学博物館(元世田谷美術館)の川口幸也
当時既に国際的に地位を確立していたガーナのエル・アナツィ(El Anatsui)、ピゴッツィ・コレクションからコンゴのシェリ・サンバ(Chéri Samba)やシェリ・シェラン(Chéri Cherin)、アパルト・ヘイト後の南アフリカで政治的メッセージも扱ってきたジェーン・アレクサンダー(Jane Alexander)やウィリアム・ケントリッジ(William Kentridge)、2007年のヴェネツィア・ビエンナーレのアフリカ館で世界の注目を集めることになるナイジェリア系イギリス人のインカ・ショニバレMBE(Yinka Shonibare MBE)(注3)、2019年の同ビエンナーレでマダガスカル館を担当することになるジョエル・アンドリアノメアリソア(Joël Andrianomearisoa)など、世代・地域・バックグラウンド全てにおいて実に多様なアーティストが参加している。
シモン・ンジャミは、かねてより『大地の魔術師たち』展で提示されてきたアフリカ像に異議を唱え、美術展をキュレーションするほか、美術雑誌レヴュ・ノワール(Revue Noir)を創刊して都会的で多様なアフリカ観を提示してきた(注4)。アフリカに関する美術展において独学のアーティストばかりが選出されてきたことだけでなく、「アフリカ」と一括りにしたイメージにおける、サハラ以南の地域(いわゆるブラックアフリカ)への偏ったフォーカスや宗教的多様性の無視を問題視しており(注5)この展示では地域や教育背景についても包括的な人選がなされた。「アフリカ」と入ったこの展覧会タイトルも当初ンジャミが望んだものではなく、最終的に図録の序文のタイトルとなる「混沌と変容(Chaos et métamorphoses)」を展覧会自体のタイトルとして提案していた(注6)。
エッセイパートも、『大地の魔術師たち』のディレクター、ジャン=ユベール・マルタン(Jean-Hubert Martin) が当時のキュレーション方針を振り返るエッセイをはじめ、様々な立場のキュレーターや学者による多様な角度からの論考が収録されており大変充実している。『大地の魔術師たち』以降、ピゴッツィ・コレクションとは異なる立場でアフリカ表象を作ってきた人々の06年の現在地が分かる。東京展図録には、川口幸也による戦後日本におけるアフリカ美術の受容についてのエッセイも掲載されている。

注1:“Africa Remix”, Moderna Museet, https://www.modernamuseet.se/stockholm/en/exhibitions/africa-remix/(最終アクセス2021年1月14日)
注2:“Africa Remix: Contemporary Art of a Continent, Johannesburg Art Gallery, South Africa”, CAACART: The Jean Pigozzi Collection, Web, http://www.caacart.com/pigozzi-exhibition.php?i=Africa-Remix:-Contemporary-Art-of-a-Continent,-Johannesburg-Art-Gallery,-South-Africa&m=223(最終アクセス2021年1月14日)
上記二会場での開催期日は、日本語カタログに掲載されている開催予定期とは異なる。
注3:当時。インカ・ショニバレは2004年にMBE(大英帝国勲章五等勲位)を受勲され、2019年にCBE(大英帝国勲章三等勲位)の称号を授与された。
注4:“New Website for Revue Noire”, Revue Noire [blog post], https://www.revuenoire.com/en/new-web-site-for-revue-noire/
注5:シモン・ンジャミ、「混沌と変容(カオスとメタモルフォーズ)」、『アフリカ・リミックス:多様化するアフリカの現代美術』、森美術館、2006年、p.10
注6:Phillipe Dagen et Serge Michel, «L’art africain» sous le regard de l’Occident, Le Monde Hors-Série, Art, Le printemps Africain, Mai-Juin 2017, p.63

6 ごあいさつ デヴィッド・エリオット
8 アフリカ大陸の地図 Map of Africa
9 混沌と変容(カオスとメタモルフォーズ) シモン・ンジャミ
20 アフリカ、展覧会、暗闇の恐怖 デヴィッド・エリオット
26 アフリカ美術の受容 ジャン=ユベール・マルタン
36 アフリカは北から始まった…… アブデラワハブ・メデブ(マリー=ロール・ベルナダックとの対話)

図版 Plates (章解説:シモン・ンジャミ)
45 アイデンティティと歴史 Identity & History
79 身体と魂 Body & Soul
113 都市と大地 City & Land

162 メイド・イン・アフリカ ジョン・ピクトン
172 アフリーシュ(アフリカという、荒地(フリーシュ)) ジャン=ルー・アンセル
178 アーフリークィヤ(AH-FREAK-IYA):現代アフリカ音楽を聴くために ルーシー・デュラン
180 アフリカ映画における自己表現 マンティア・ディアワラ
186 ジャンルが交錯するパフォーマンスーー演劇から儀式へ、あるいは混沌の美学 ベルナール・ミュレ
193 ファッションとアフリカの理念 フディタ・ヌラ・ムスタファ
199 マルチプレーヤー――アーティスト主導とキュレーターのリレーによるプロジェクト クレモンティーヌ・ドゥリス
207 戦後日本におけるアフリカ美術の受容――その歴史的概観 川口幸也
219 作家略歴および解説 Artists’ Biographies
250 主要参考文献 Selected Bibliography
253 作品リスト List of Works
265 執筆者略歴 Essay Writers’ Biographies

付属CD-Rom
サンプラー(現代アフリカ美術の語彙解説(インデックス付き))Sampler (Terminology of Contemporary Art) with index
作家略歴および解説 Artists’ Biographies
主要参考文献 Selected Bibliography

著者略歴

中村 融子 | Nakamura Yuko

京都大学大学院アジアアフリカ地域研究研究科アフリカ地域研究専攻博士課程。東京大学法学部卒業。美術史・人類学の手法を用いて、主にアフリカ現代美術を研究する。美術制度史やアートエコシステムに焦点を当て、近代的美術制度の中心と辺境、陶芸史、現代陶芸もテーマとして扱う。キュレーター、講演等の活動を行っている。
著作に「アートシーンのフィールドワークー現代アフリカ美術を取り巻く場と人々」『現代アフリカ文化の今 15の視点から、その現在地を探る』(青幻舎)がある。
https://www.instagram.com/ottk128/

現代アフリカ文庫:Arts of Africa: The Contemporary Collection of Jean Pigozzi

書名:Arts of Africa: The Contemporary Collection of Jean Pigozzi
発行年:2005
発行:Grimaldi Forum, Monaco (Skira Edition)
種類:コレクション・カタログ(Arts of Africa: From Traditional Arts to the Jean Pigozzi Contemporary Collectionに出品した作品を収録)
言語:英語
会場・開催期日:
Grimaldi Forum, Monaco グリマルディ・フォーラム(モナコ)
2005年7月16日―9月4日

モナコで開催された美術展への出品を機に出版された、世界最大の現代アフリカ美術コレクションであるピゴッツィ・コレクションのコレクションカタログ。同コレクションのディレクターであるアンドレ・マニャン(André Magnin)が編著を務める。『大地の魔術師たち』展を最終日に訪れた資産家ジャン・ピゴッツィ(Jean Pigozzi)は、展覧会のアフリカに関するリサーチを担当したキュレーター、アンドレ・マニャンと出会い意気投合し、コレクションを立ち上げる。このカタログに収録されている、アール・ポピュレールの画家シェリ・サンバ(Chéri Samba)、未来都市の模型的な彫刻で知られるボディス・イセク・キンゲレス(Bodys Isek Kingelez)や、スタジオ写真家だったマリク・シディベ(Malick Sidibé)ら、サブ・サハラの独学の作家たちを見出してきた。マニャンが見出した作家の作品を、ピゴッツィの財力で大量に買い上げ、そのコレクションを用いた展覧会を世界中の美術館等で実施する(注1)。こうしたキュレーションと、見事なプロデュースによって、90~00年代を通じて国際的な現代美術シーンに独学の作家たちを「アーティスト」として認めさせてきた(注2)。2019年にはピゴッツィは、ニューヨーク近代美術館にシェリ・サンバ作品を含む45点のコレクション作品を寄付し、これらのアーティストは美術の「正史」に名を刻むことになる(注3)。
ピゴッツィのコレクターとしての歩みや独自の哲学、マニャンのアフリカへの情熱が語られるエッセイを収録。コレクション形成の経緯と共に、独学の作家のみを扱う方針の背後にある意図を説明し、『大地の魔術師たち』展以来受けてきた「アフリカへのステレオタイプを強化する」との批判にも応答する。2005年当時の、アフリカ現代美術の表象をめぐる白熱した議論が伝わる。マニャンはアフリカ大陸内でのアートのあり方の問題にも言及し、2005年当時オープンしたばかりの、ベナンのジンスー財団について、ローカルなアートエコシステムを根付かせる野心的な試みを評価している(注4)。(表紙のデザインに名前が隠れている。見つけてみよう。)

注1: André Magnin, “A Prospecting Life”, Arts of Africa: The Contemporary Collection of Jean Pigozzi, Milan, Skira, 2005, pp.12-22 参照。
注2:アンドレ・マニャンは、「現在のアートシーンは、我々の選択が間違っていなかったことを証明しているようだ。」”The current art scene seems to have vindicated our choices.” (前掲注1、p.27) と語る。
注3:拙稿「アートシーンのフィールドワークー現代アフリカ美術を取り巻く場と人々」『アフリカ現代文化の今』(青幻舎、2020年)pp.91-92の年表では、1989年から2019年までのマニャンとピゴッツィが手がけた展覧会の歴史もまとめた。
注4:前掲注1、p.33

目次
12 Jean Pigozzi A Collecting Life
22 André Magnin A Prospecting Life
40 Universe of A Collection
213 Everyday Art
357 Appendix

著者略歴

中村 融子 | Nakamura Yuko

京都大学大学院アジアアフリカ地域研究研究科アフリカ地域研究専攻博士課程。東京大学法学部卒業。美術史・人類学の手法を用いて、主にアフリカ現代美術を研究する。美術制度史やアートエコシステムに焦点を当て、近代的美術制度の中心と辺境、陶芸史、現代陶芸もテーマとして扱う。キュレーター、講演等の活動を行っている。
著作に「アートシーンのフィールドワークー現代アフリカ美術を取り巻く場と人々」『現代アフリカ文化の今 15の視点から、その現在地を探る』(青幻舎)がある。
https://www.instagram.com/ottk128/

現代アフリカ文庫:インサイド・ストーリー アフリカの同時代美術

書名:インサイド・ストーリー アフリカの同時代美術 An Inside Story: African Art of Our Time
発行年:1995
発行:美術館連絡協議会、読売新聞社
種類:展覧会図録
言語:日本語/英語・フランス語
会場・開催期日:
世田谷美術館 1995年9月23日―11月19日
徳島県立近代美術館 1996年1月20日―3月17日
姫路市立美術館 1996年4月6日―5月6日
郡山市立美術館 1996年5月18日―6月23日
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 1996年7月7日―9月1日
岐阜県美術館 1996年9月13日−10月27日

当時、世田谷美術館に在籍した川口幸也が主な企画者となり、日本で初めて開催された現代のアフリカ人アーティストの美術展。まず注目すべきは、エル・アナツィ(El Anatsui)やロミュアルド・アズメ(Romuald Hazoumè)ら現在、世界的な存在となったアーティストの初期作品が展示されている点であろう。特に、同年にオクトーバー・ギャラリーでの初個展を開催した(注1)エル・アナツィによる木彫作品は見事であり、現在では最もよく知られる布をモチーフにしたオブジェを作り始める前の、彼のアーティストとしての軌跡を知ることができる。90年代半ばにこうしたコレクションが世田谷美術館に形成されたことの意義は大きい(注2)。
またこの展示は、植民地支配下の1920年ごろから西洋人によって開かれた私塾で描かれた「絵画」作品、アフリカ諸国で独立期(1960年代から70年代)モダニズム作品を展示し、90年代に至るアフリカの美術を取り巻く近現代史の紹介を試みた。同時に、セネガルのガラス絵や各国のストリートアートなど、人々の生活に馴染みの深い都市のアートも同時に展示された。その分類と解説のトーンに、90年代当時のアフリカ現代美術シーンの状況が反映されている。エッセイパートでは、ダカールの研究者が(当時の)セネガルの現代美術動向を美術制度史を抑えつつ紹介する小論文、独立前後のアフリカで勃興したモダニズム美術運動についてのエッセイのほか、日本人研究者たちによるアフリカ美術らしさを期待するまなざしを見つめ直す論考などが収録されている。90年代当時のアフリカと西洋中心的な美術制度の関係や、それをめぐる議論の状況が理解できる。

注1:オクトーバー・ギャラリーは、ロンドンにあるアフリカを含む非西洋のアーティストを多く扱ってきた有名ギャラリー。トランス・アヴァンギャルド運動の先駆的な存在としても知られる。エル・アナツィのギャラリー展示についてhttps://octobergallery.co.uk/artists/anatsuiを参照。
注2:同館はこれ以降アフリカの美術コレクションを形成し、2018年−2019年には 「ミュージアムコレクションⅢ アフリカ現代美術コレクションのすべて」を開催した。

目次
8 序論 川口幸也
11 ポスト=コロニアル時代のアフリカ現代美術 デレ・ジェゲデ
14 セネガルの現代造形美術――状況と展望 アブドゥ・シィラ
20 オショボ ウリ・バイアー
23 ヴォウヴォウ クラ・ンゲッサン

カタログ
27 I. プロローグ
35 II. フリー・スクールの時代
73 III. 伝統とモダニズム
95 IV. アートを超えて

154 所感:アフリカと私の今――ムスタファ・ディメの作品から 古川秀昭
156 私が見たアフリカ「美術」の一断面 菅野洋人
157 アフリカの感性――その静かな一面 吉原美恵子
158 アフリカの新しい伝統:いま,アビジャンのストリートから 鈴木ひろゆき
160 インサイド・ストーリーあるいはオーセンティシティの神話 川口幸也

164 Introduction by Yukiya Kawaguchi
166 Contemporary Art in Post-Colonial Africa by Dele Jegede, Ph.D
169 Les arts plastiques sénégalais contemporains: situation et perspectives par Abdou Sylla
175 Oshobo by Ulli Beier
177 Le “Vohou Vohou” par Kra N’Guessan
179 Catalogue
I. Prologue
II. The Age of Free School
III. Tradition and Modernism
IV. Beyond Art

190 Africa and Myself: Impressions of the works of Moustapha Dimé by Hideaki Furukawa
192 A Cross-Section of the African “Art” I Have Seen by Hiroto Kanno
193 The Quiet Side of African Sensibility by Mieko Yoshihara
194 New African Traditions: From the Streets of Abidjan by Hiroyuki Suzuki
196 An Inside Story: The Myth of Authenticity by Yukiya Kawaguchi
198 関連年表
199 主要参考文献 / Selected Bibliography

著者略歴

中村 融子 | Nakamura Yuko

京都大学大学院アジアアフリカ地域研究研究科アフリカ地域研究専攻博士課程。東京大学法学部卒業。美術史・人類学の手法を用いて、主にアフリカ現代美術を研究する。美術制度史やアートエコシステムに焦点を当て、近代的美術制度の中心と辺境、陶芸史、現代陶芸もテーマとして扱う。キュレーター、講演等の活動を行っている。
著作に「アートシーンのフィールドワークー現代アフリカ美術を取り巻く場と人々」『現代アフリカ文化の今 15の視点から、その現在地を探る』(青幻舎)がある。
https://www.instagram.com/ottk128/

現代アフリカ文庫:Magiciens de la Terre

書名:Magiciens de la Terre マジシャン・ドゥ・ラ・テール 大地の魔術師たち
発行年:1989
発行:Centre Pompidou, Paris
種類:美術展図録
言語:フランス語
会場・開催期日:
Musée national d’art moderne Centre Georges Pompidou et Grand Halle de La Villette, Paris
ジョージ・ポンピドゥ・センター国立近代美術館、ラ・ヴィレット大ホール(パリ、フランス)
1989年5月18日―8月14日

欧米の主要美術館においてアフリカの現代作家を展示した初めての大規模展であり、現在のシーンを形作る多くの論争やキュレーション・コレクションのきっかけとなった、現代アフリカ美術にとって記念碑的展覧会。
1984年にニューヨーク近代美術館で開催された『20世紀美術におけるプリミティビズムー「部族的」なるものと「モダン」なるものとの親縁性』に寄せられた批判に応答して(注1)、西洋と非西洋のアーティスト100人を一堂に集めて同じ地平で展示するという、当時としては画期的な試みだった。アフリカ現代美術への多大な影響で知られるが、西洋を含む世界各国の作品を西洋中心的ではない形で提示した展覧会であり、実は、日本からも河口龍夫や、宮島達男らが参加している。この展覧会は大きな論争を巻き起こしたが、発展途上国、特にアフリカの選出アーティストが「独学」の作家たちに限られたことに批判が集まった(注2)。すでに近代的なアカデミズムに基づいた美術学校がアフリカ諸国にあるにも関わらず(注3)、民衆的な造形の職人や独学の作家を恣意的に選ぶことで、西洋の見たい「野性的なアフリカ」像、アフリカに対するステレオタイプを上塗りしているのではないかという批判である。
この展覧会では4人のキュレーターで地球上の地域を分担してリサーチした。その際アフリカを担当したのが、のちにアフリカ現代美術シーンのレジェンドとなるキュレーター&ギャラリストのアンドレ・マニャン(André Magnin)である。そして彼は、最終日に訪れた大富豪ジャン・ピゴッツィ(Jean Pigozzi)と共にアフリカ現代美術の大規模コレクションを形成し、2019年にはニューヨーク近代美術館にコレクションの一部を寄贈することになる。
展覧会に批判的な立場からも、新たな展示や美術雑誌の創刊など様々なアクションがとられた(注4)。そして、現代のアフリカの表象をめぐる応酬が、キュレーションやコレクションを通じて活発に行われることで、アフリカ現代美術シーンはますます発展して行ったのである。

注1:「『20世紀美術におけるプリミティビズムー「部族的」なるものと「モダン」なるものとの親縁性』と異なり」 (À la différence de l’exposition de 1984 «Primitivism in Twentieth Century Art: Affinity of the Tribal and the Modern») “Magiciens de la Terre”, Centre Georges Pompidou, Web, https://www.centrepompidou.fr/fr/programme/agenda/evenement/cTEXnL(2021年1月10日アクセス)。
注2:展覧会の後の批評や議論の展開については、Lucy Steeds et al., Making Art Global (Part 2) ‘Magiciens de la Terre’ 1989, Afterall Books, 2013 に詳しい
注3:Chika Okeke-Agulu and Okwui Enwezor, African Contemporary Art Since 1980, Damiani, 2009, p.10
注4:拙稿「アートシーンのフィールドワークー現代アフリカ美術を取り巻く場と人々」『アフリカ現代文化の今』(青幻舎、2020年)pp.91-92の年表参照。

目次
8-11 Préface Jean-Hubert Martin
12-13 IL – visiteur qui cherche le sens? – joue à revenir sur ses pas. Aline Luque
14-15 True Stories, ou Carte du monde poétique Mark Francis
16-17 6° 48′ Sud 38° 39′ Est André Magnin
18-19 La planète tout entière, enfin… Pierre Gaudibert
20-23 Ouverture du piège: l’exposition postmoderne et «Magiciens de la Terre» Thomas MacEvilley
24-27 Hybridité, identité et culture contemporaine Homi Bhabha
28-31 Ravissantes périphéries Jacques Soulillou
33-70 L’Autre, ce grand alibi Bernard Marcadé

著者略歴

中村 融子 | Nakamura Yuko

京都大学大学院アジアアフリカ地域研究研究科アフリカ地域研究専攻博士課程。東京大学法学部卒業。美術史・人類学の手法を用いて、主にアフリカ現代美術を研究する。美術制度史やアートエコシステムに焦点を当て、近代的美術制度の中心と辺境、陶芸史、現代陶芸もテーマとして扱う。キュレーター、講演等の活動を行っている。
著作に「アートシーンのフィールドワークー現代アフリカ美術を取り巻く場と人々」『現代アフリカ文化の今 15の視点から、その現在地を探る』(青幻舎)がある。
https://www.instagram.com/ottk128/

現代アフリカ文庫:タグチ・アートコレクション 現代アフリカ文庫について

「”GLOBAL NEW ART” 世界を一望できるコレクション」を標榜するタグチ・アートコレクションでは、アフリカの現代アートの収集や展示にも力を入れています。そこで、タグチ・アートコレクションと中村融子は、2020年、現代アフリカ美術に関する展覧会カタログや書籍をコレクションするプロジェクトをはじめました。
モダン・アートの時代に一方的に「まなざされる」存在だったアフリカの美術は、近現代を通じて主体性を回復し、国際的なアートワールドに立場を確立してきました。さらに近年は、アートワールドをアフリカ大陸内に再帰的に拡大するような動きが活発になり、各国の新しい美術館や芸術祭、アートセンターによる興味深い試みが次々と生まれています。

アフリカの参加によって世界の美術の西洋中心性が揺らぎ、各国の在来の文化や歴史、市民の感性が反映されるようになってきました。このように美術の「脱植民地化」を進め、地域の要素によって世界の美術をアップデートするアフリカは、21世紀美術を考える上で欠かせない存在です。

また、美術作品を鑑賞しその背後にある独創性を感じることで、アフリカ諸国の人々を身近にそして新しい角度から感じられます。作品理解を通じて、アフリカ諸国の歴史や文化、アフリカ大陸内の多様性についても学ぶきっかけにもなります。

しかし現在の日本において、現代アフリカの美術は、作品を鑑賞する機会のみならず、アーティストや美術史について情報入手の機会も限られています。そこで、鑑賞者や愛好家の方々はもちろん、専門家として美術に関わるコレクターやキュレーター、研究者の方々にも、現代アフリカの美術について幅広く知っていただくための場を提供することを考えました。そうして生まれたのが「タグチ・アートコレクション 現代アフリカ文庫」(African Contemporary Art Book Collection)です。

ここでは、美術館や国際芸術祭の展示カタログ、美術史やアフリカ文化についての学術書、ギャラリーカタログやマーケットリポートを収集し、それぞれの書籍・資料ついての解説と共に公開します。現代アフリカ美術を知るためには、どんな本を読めばいいのか、これまでにどんな展示があり、どんな人物やギャラリーの発信に注目するべきか。この文献リストと解説を参考に、関心を深めて頂ければ幸いです。

※購入候補となる書籍のリストアップは、私中村が行い、田口美和さんが許諾されたものを購入します。また、世界各地のアートフェアやギャラリーを訪れた際に入手されたカタログや資料も含まれます。
※それぞれの書籍・資料は閲覧が可能です。お問い合わせはinfo@taguchiartcollection.jpまで

著者略歴

中村 融子 | Nakamura Yuko

京都大学大学院アジアアフリカ地域研究研究科アフリカ地域研究専攻博士課程。東京大学法学部卒業。美術史・人類学の手法を用いて、主にアフリカ現代美術を研究する。美術制度史やアートエコシステムに焦点を当て、近代的美術制度の中心と辺境、陶芸史、現代陶芸もテーマとして扱う。キュレーター、講演等の活動を行っている。
著作に「アートシーンのフィールドワークー現代アフリカ美術を取り巻く場と人々」『現代アフリカ文化の今 15の視点から、その現在地を探る』(青幻舎)がある。
https://www.instagram.com/ottk128/

蔵書一覧

和書
<展覧会カタログ>
インサイド・ストーリー 同時代のアフリカ美術/世田谷美術館ほか、1995年
アフリカ・リミックス 多様化するアフリカの現代美術/森美術館、クンスト・パラスト美術館(デュッセルドルフ、ドイツ)ほか、2006年
彫刻家エル・アナツィのアフリカ/国立民族学博物館ほか、2008年
インカ・ショニバレCBE:Flower Power/福岡市美術館、2019年

<学術書>
アフリカの同時代美術―複数の「かたり」の共存は可能か―/川口幸也、2011年
アフリカ美術の人類学―ナイジェリアを生きるアーティストとアートのありかた/緒方しらべ、2017年
現代アフリカ文化の今 15の視点から、その現在地を探る/ウスビ・サコ、清水貴夫編著、2020年

洋書
<展覧会カタログ>
Magiciens de la terre / Centre Georges Pompidou et Grande Halle de la Villette, Paris, France, 1989
Africa Explores: 20th Century African Art / Center for African Art, New York, US, 1990
Documenta 11, Platform 5: Ausstellung | Exhibition: Ausstellungsorte | Exhibition Venues / Kassel, Germany, 2002
Arts of Africa: The Contemporary Collection of Jean Pigozzi / Grimaldi Forum, Monaco, 2005
Magiciens de la terre Retour sur une exposition légendaire / Centre Georges Pompidou, Paris, France, 2014
PANGAEA: New Art from Africa and Latin America / Saatchi Gallery, London, UK, 2014
PANGAEA II: New Art from Africa and Latin America / Saatchi Gallery, London, UK, 2015
Beauté Congo – 1926-2015 – Congo Kitoko / Fondation Cartier pour l’art contemporain, Paris, France, 2015
Being There: South Africa, A Contemporary Art Scene / Fondation Louis Vuitton, Paris, France, 2017
“The insiders”, a selection of works (1989-2009) from the Contemporary African Art Collection of Jean Pigozzi / Fondation Louis Vuitton, Paris, France, 2017
Congo Stars / Kunsthaus Graz, Graz, Austria etc., 2018
Ghana Freedom, Ghana Pavilion at the 58th International Art Exhibition La Biennale di Venezia / Venice, Italy, 2019
Kinshasa Chroniques / La Cité de l’architecture et du patrimoine, Paris, France, 2020-2021

<アートフェア>
1:54 Contemporary African Art Fair 2016
1:54 Contemporary African Art Fair 2017

<ギャラリー・カタログ>
While The Harvest Rots: Possessing Worlds of Kudzanai Chiurai’s Art / Goodman Gallery, 2017
La Sfinge Nera II, Dal Marocco al Madagascar / Primo Marella Galler, 2018
Africa Universe / Primo Marella Gallery, 2019
Joël Andrianomearisoa / Primo Marella Gallery, 2020

専門書・カタログ
Angaza Afrika: Afrian Art Now / Chris Spring, 2008
Contemporary African Art since 1980 / Okwui Enwezor, Chika Okeke-Agulu, 2009
Kumasi Realism, 1951-2007: An African Modernism / Atta Kwami, 2014
Africa 21e siècle: La photographie contemporaine africaine / Ekow Eshun, 2020