海外アートマーケットNews Picks!!:2024年8月
■海外アートニュース
AI
EU(欧州連合)が支援するPERCEIVEプロジェクトが進んでいる。このプロジェクトは人工知能ツールの助けを借りて本物の色彩を再現し劣化した芸術作品を保存するためのもので、ツールパッケージの開発により、彫像、絵画、紙の作品、織物、写真、拡張現実の美術作品という5つの主要な美術作品の元の色を研究し、デジタルで再現する能力が強化されることが期待されている。(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/news/the-scream-art-preservation-artificial-intelligence-color-reconstruction-1234714958
個人美術館
Netflixの共同創業者で元CEOのリード・ヘイスティングス氏が、ユタ州イーデンにあるパウダーマウンテンスキーリゾートにアートパークをオープンする計画を明らかにした。ヘイスティングス氏が設立準備を進めている非営利団体が所有する作品を1万2000エーカー(約48㎢)の敷地に展示、一般公開される予定だ。(Artforum)
https://www.artforum.com/news/netflix-cofounder-to-open-outdoor-art-park-utahs-powder-mountain-557540
美術館
第60回ヴェネツィア・ビエンナーレのオーストラリア館に展示されたアーチー・ムーアの作品《 kith and kin》が、オーストラリア政府によってクイーンズランド美術館に購入され、同美術館は購入パートナーである英国のテートと作品を共有すると発表された。《 kith and kin》は4月に名誉ある最優秀ナショナル・パビリオン賞の金獅子賞を受賞、ムーアはオーストラリアと先住民族のアーティストとして初めてこの賞を受賞していた。(artnet)
https://news.artnet.com/art-world/archie-moore-tate-queensland-2525572
デ・ペール文化財団は巡回展を運営する会社 エキシビションズ・デベロップメント・グループ(EDG)に対し、展覧会に関して「約束を果たせなかった」、「中東でのテロ攻撃」という不特定の理由により恐竜展の作品を調達できなかったとして訴訟を起こした。まだ和解していないこの訴訟は、美術業界で急成長している巡回展会社のビジネスに光を当てている。スタッフが少なくプログラム予算も限られている小規模、中規模、地方の美術館は、自館で制作するには複雑すぎたり費用がかかる展覧会をEDGのような会社に頼ることが多いのが実情だ。(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/news/traveling-exhibition-companies-explained-1234715999
多額の負債を抱える日本の化学会社・DIC株式会社は、同社が所有するDIC川村記念美術館の将来を再検討している。この美術館はマーク・ロスコの「シーグラム壁画」7点のほか、サイ・トゥオンブリー、パブロ・ピカソ、レンブラント、クロード・モネ、ジャクソン・ポロック、アンディ・ウォーホル、ロバート・ライマンなどの作品を所有していることでも有名だが、同社は現在美術館の将来について、現状維持、縮小移転、廃止の3つの選択肢を検討しており、企業価値向上委員会は「このまま美術館を運営し続けることは現実的ではない」との見解を示している。(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/news/dic-corporation-kawamura-memorial-museum-of-art-collection-future-rothko-murals-1234715939
アーティスト育成
A&Lバーグ財団が立ち上げたアーリー ステージ アート プロフェッショナル(ESAP)プログラムにより、若いラテン系キュレーターのグループが今年4月のヴェネツィア ビエンナーレのオープニングウィークに参加を果たした。このプログラムには、メンターシップ、ワークショップ、助成金の受け取り、専門能力開発ガイダンスが含まれている。参加したPS1のアシスタントキュレーターであるKetelsen González氏は、この機会が「私の成長の重要な時期に」訪れたと語った。(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/news/al-berg-foundation-latinx-curators-mentorship-program-1234715625
コレクション寄贈
ロサンゼルスの3つの美術館、ハマー美術館、ロサンゼルス・カウンティ美術館、ロサンゼルス現代美術館は、ロサンゼルスのコレクターであるジャールとパメラ・モーンから約350点の作品を共同で取得することに合意した。今回寄贈されるモーン夫妻のコレクションはロサンゼルスを拠点とする新進アーティストを中心としており、ケリー・アカシ、キャサリン・アンドリュース、カルメン・アルゴテなどの作品合計約260点に上る。(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/news/mohn-collection-joint-acquistion-hammer-museum-moca-lacma-1234715564
大英博物館は、故香港の実業家、慈善家、元理事のジョセフ・ホートンによる中国の古美術品の遺贈を、同博物館の3世紀にわたる歴史の中で最も寛大な寄贈品の一つであり、その遺贈の価値が1億2,300万ポンド(約234億6,000万円)であったことが明らかになった。この驚異的な金額により、大英博物館の今年度の寄付金と遺贈品の総額は1億3,850万ポンド(約264億2,000万円)となり、2022~23年度の2,760万ポンド(約52億7,000万円)の5倍となった。(The Art Newspaper)
https://www.theartnewspaper.com/2024/08/21/british-museum-reveals-that-2022-bequest-from-tycoon-and-former-trustee-was-worth-£123m
米国で最も高く評価され、精巧にキュレーションされた個人美術コレクションの所有者・リチャード・ヘドリーンが3億ドル(約434億5,000万円)の美術コレクションを寄付する理由とは。 ウィレム・デ・クーニング、ルシアン・フロイドなどの歴史的に有名な名前から、アンナ・ウェイアントなどの現代アーティストまでが含まれる膨大なコレクションを所有するヘドリーン氏は、妻のベティが2022年に亡くなった後、彼女の出身校であるシアトル大学に寄贈を開始。美術館の新設のための2,500万ドル(約36億2,000万円)の資金も提供される。これは米国の大学に贈られた美術品として、またシアトル大学の133年の歴史の中でも最大の寄贈となる。(Artsy)
https://www.artsy.net/article/artsy-editorial-american-collector-donating-300-million-art-collection
■海外アートフェアスケジュール
FRIEZE ソウル 9月4日ー7日
https://www.frieze.com/fairs/frieze-seoul
■海外アートオークションスケジュール
9月25日 サザビーズ 香港 イブニングセール
9月26日 クリスティーズ 香港 イブニングセール
https://www.christies.com/en/auction/20th-21st-century-evening-sale-21648-hgk
9月26日 サザビーズ 香港 デイセール
https://www.sothebys.com/en/buy/auction/2024/modern-contemporary-day-auction-2
9月27日 クリスティーズ 香港 デイセール
https://www.christies.com/en/auction/20th-century-day-sale-21649-hgk
https://www.christies.com/en/auction/21st-century-day-sale-21650-hgk
著者
大胡 玄 (おおご げん)
大学卒業後
1998年 コーンズアンドカンパニーリミテッド
2004年 ニューヨーク大学教育学部スタジオアーツ写真専攻 修士課程修了
2004年 クリスティーズ(NY) 日本・韓国美術部門
2007年 クリスティーズ ジャパン
アジア現代アート及び NY・Londonのコンテンポラリーアート
個人コレクターを中心に美術品全般の出品/落札に携わる
2019年 株式会社アマナ ARTshelfプロジェクト
2021年 大胡アートアドバイザリー合同会社 設立