海外アートマーケットNews Picks!!:2025年6月後半

■海外アートニュース

美術館
ロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)は、ジェフ・クーンズの巨大なトピアリー彫刻「Split-Rocker(スプリット・ロッカー)」が、新設のデイヴィッド・ゲフィン・ギャラリーズ・ビルディングのキャンパス東側に設置されることを発表する。2000年に制作された高さ約11メートルのこの生きた彫刻は5万株以上の花を咲かせるように設計されており、8月に種まきが行われる予定だ。(Los Angeles Times)
https://www.latimes.com/entertainment-arts/story/2025-06-23/jeff-koons-sculpture-split-rocker-lacma-david-geffen-galleries

バンクーバー美術館(VAG)が、運営予算削減を受け人員削減を発表した。VAGの広報担当は声明で、今回の措置は「長期的な持続可能性を確保する」ために運営予算を削減する美術館の取り組みの一環だと述べたが、影響を受ける職員数については明らかにしていない。(Daily Hive)
https://dailyhive.com/vancouver/vancouver-art-gallery-confirms-layoffs

ゲッティ美術館は、グローバル・アート&サステナビリティ・フェローシップ・プログラムを開始した。このプログラムは、気候変動へのレジリエンス(回復力)に焦点を当てた、キャリア初期のプロフェッショナルやビジュアルアーティストを支援するものだ。この一環として、ゲッティ美術館は2年間にわたり、6大陸にまたがる15の文化・科学団体(ギリシャのアテネ・アカデミー、フランス国立図書館、スペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館、オーストラリアのジェームズ・クック大学など)を支援するという。(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/news/the-getty-global-art-and-sustainability-fellowship-launches-1234745313

キュレーター
アートキュレーターは常に、世界に発信する刺激的な新しい才能を探し求めている。次世代を担うアーティストをいち早く発掘し支援することは、キュレーターにとってキャリアを決定づける大きな功績となることもあり得る。しかし、彼らは一体何を探しているのだろう?記事では新進気鋭の才能を見抜く方法、そして意外な場所でその才能を発見する方法について語る。(artnet)
https://news.artnet.com/art-world/how-top-curators-spot-the-artists-of-tomorrow-2661383

アートマーケット
アート市場の低迷と新たな関税への懸念の中、デザイン部門は成長を続けている。今月初め主要オークションハウスはニューヨークでデザインオークションを開催、3社全体で前年比62.3%の増加と予想を上回る結果となった。クリスティーズで20世紀装飾美術担当の副社長を務めていたルイス・ウェクスラー氏は、コレクターが美術品を購入するのと同じ方法でデザイン作品を購入するようになったことが要因と語った。「壁に飾られている絵画と同じ品質と水準の照明、ベンチ、ソファなどを、デザインの世界でも手に入れることができるという認識が広まっていると思います。」(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/market/design-market-report-2025-auction-results-tiffany-lalanne-1234745884

アート市場のベテランたち - エド・ドルマン、アレックス・ドルマン、ブレット・ゴーヴィ、フィリップ・ホフマン、そしてパティ・ウォンは新たな共同コンサルティング会社、ニュー・パースペクティブズ・アート・パートナーズ(NPAP)設立する。各パートナーは本業を続けながら高度で専門的な問題解決が必要な場合にのみ集結し、コレクター、信託会社、ファミリーオフィスに対し、重要なコレクションの管理、成長、分散方法について助言を提供、高度なアート界の課題解決を目指すという。さながらアート界のアベンジャーズのようなものだ。(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/news/phillip-hoffman-ed-dolman-patti-wong-consultancy-new-perspectives-1234746137

中東
カイロに待ち望まれていた大エジプト博物館(GEM)の正式開館日がまた延期となった。10億ドル(約1,441億円)規模のこの大博物館は1992年に建設計画が発表されて以降、パンデミック、アラブの春、金調達と物流の課題、そして今やイスラエルとイランの間で勃発した新たな戦争などの影響で度々延期されていた。エジプト観光考古省によると、当初は7月3日にオープンする予定だったが、2025年第4四半期の「適切な時期」まで延期するという。(artnet)
https://news.artnet.com/art-world/inside-grand-egyptian-museum-2658355

税制
イタリア政府は、美術品販売にかかるVATをEU内で最高水準の22%から5%に引き下げると発表した。この引き下げ税率はEU内で最低水準となる(ドイツとフランスがそれぞれ7%と5.5%のVATで、これに最も近い)。フィナンシャル・タイムズ紙によると、この措置は先週閣議で承認され、イタリアのギャラリー、アーティスト、オークションハウス、そして美術品市場関係者からの圧力を受けて実現した。イタリアのアレッサンドロ・ジュリ文化大臣は声明で、この減税は「私たちの文化的アイデンティティの最も重要な拠点の一つである、アートエコシステム全体」に救済をもたらすはずだと述べた。(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/market/italy-cuts-art-vat-to-5-percent-1234745954

ハイブランド動向
フランスのブランドであるシャネルが、過去5年間のアーティストや文化機関との取り組みを振り返る出版物『アート&カルチャー誌』を創刊する。これは英国でのブランド設立100周年を記念した文化活動強化の一環で、表紙にはガブリエル・シャネルの個人コレクションから選ばれたアイテムを使用、250ページにわたり様々な紙種を使用した視覚的な饗宴となっている。創刊号(通称:Vol.1)は、ロンドンはもちろんミラノ、ニューヨーク、パリ、ソウル、上海、シドニー、東京を含む世界20の書店で販売される。(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/news/chanel-launches-arts-and-culture-magazine-1234745969

アートバーゼル
6月17日、アート・バーゼル2025は熱気あふれるスタートを切った。今年のフェアには42カ国から289のギャラリーが参加し、19の新規参加ギャラリーが加わる。また、今年は新たに「プレミア」セクションが設けられ、主に中規模ギャラリー10組が過去5年間に制作した作品を展示するという。このセクションは、新進アーティストの個展に焦点を当てた「ステートメント」セクションと共に、有名ギャラリー以外のギャラリーにもより多くのスペースを提供するものだ。記事ではこのように多彩な展示を要するアート・バーゼル2025のベストブース10を紹介する。(Artsy)
https://www.artsy.net/article/artsy-editorial-10-best-booths-art-basel-2025

アートバーゼルの会場動画
VernissageTVというHPが会場を歩いてまわっているような目線で約15分の動画掲載してます。行けなかった方は参考までに!
https://vernissage.tv/2025/06/18/art-basel-2025/


著者

大胡 玄 (おおご げん)

大学卒業後
1998年 コーンズアンドカンパニーリミテッド
2004年 ニューヨーク大学教育学部スタジオアーツ写真専攻 修士課程修了
2004年 クリスティーズ(NY) 日本・韓国美術部門
2007年 クリスティーズ ジャパン
アジア現代アート及び NY・Londonのコンテンポラリーアート
個人コレクターを中心に美術品全般の出品/落札に携わる
2019年 株式会社アマナ ARTshelfプロジェクト
2021年 大胡アートアドバイザリー合同会社 設立