海外アートマーケットNews Picks!!:2021年11月後半

影響力のある100人は、キュレーターや哲学者なども多数掲載されていますが1位は”NFT"でした。私には個々の作品の芸術性がどこに存在するのかまだ理解不足ですが2021年はNFT元年とも言える年です。海外では相変わらず数十億円規模の美術館寄付や改築が進んでいます。

■海外アートニュース

ArtReviewが提供するアート界における影響力のある100人。トップ20人中5人は“Thinker”という肩書き。哲学。(ArtReview)
https://artreview.com/power-100/

2008年ロシアのビリオネア、Dasha Zhukova と Roman Abramovich(元夫婦)によって建設されたモスクワのガレージ美術館は日本人建築家SANAA(西沢立衛と妹島和世)の設計により拡張される(Artforum)
https://www.artforum.com/news/moscow-s-garage-museum-to-expand-in-gorky-park-87267

ベビーブーマーが OLD AGE に入り始め、米国の美術館はヤングパトロンなど若い世代の取り込む施策を数多く行い始めている。ダラス美術館は2019年の展覧会オープニングでDJを呼んで若者向けパーティーを開催。メトロポリタン美術館は$600ー$10,000で若者会員。グッゲンハイム美術館は Young Collectors Council など。現代の若い世代は様々なバックグランドの人物で形成されていて今後が楽しみ(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/news/state-of-museum-young-patron-groups-diversity-1234610239/

ベルリン・マイアミ・上海に Fotografiska という写真美術館が開館する(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/news/fotografiska-berlin-miami-shanghai-expansion-1234611328/

2016年に亡くなった女性建築家 Zaha Hadid 設計の新建築が中東の3都市(アラブ、サウディアラビア、イラク)で2022年に竣工する(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/news/zaha-hadid-riyadh-central-bank-iraq-opening-dates-1234611050/

ロサンゼルスカウンティ美術館10年以上キュレーターを勤めている Christine Y. Kim は2022年1月より英国 Tate美術館のキュレーターとなり、ロンドンとロサンゼルスを拠点に北米現代作家のリサーチやコレクション収蔵の仕事をする(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/news/christine-y-kim-tate-curator-at-large-1234611006/

ブルックリン美術館はニューヨーク市から約57億円が寄付された。この金額は過去最大であり、今後美術館内部の、自然光が入りやすい天井やプロジェクションに対応した壁の増設など改築・改装費用に充てられる(Artforum)
https://www.artforum.com/news/brooklyn-museum-receives-transformative-50-million-gift-from-new-york-city-87294

オルタナティブ投資専門の Yieldstreet はコンテンポラリーアート専門のファンドを開始した。一口$10,000。5年で15%〜17%を目指す(CNBC)
https://www.cnbc.com/2021/11/12/yieldstreet-launches-fund-for-smaller-investors-to-bet-on-art-.html

香港のクリプト通貨プラットフォーム企業CEOの Justin Sun(31歳)は先日のサザビーズオークションでジャコメッティの《 Le Nez(1947)》 を約80億円で落札したと公表。若いクリプト起業家の高額作品購入は Justin Sun だけではなく、スイスのベンチャー企業の Ryan Zurrer(38歳)はクリスティーズオークションで Beeple の《 Humane(One)》 を約27億円で落札(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/market/justin-sun-buys-giacometti-sothebys-macklowe-collection-1234610241/

新興のデジタルアートベンチャー企業(DMINTI)は有名アーティストのNFT市場への参入の企画提供を始めている。まずは作家の David Salle など(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/news/david-salle-nft-dminti-1234610301/

シカゴとNYが拠点の Gray Gallery(アレックスカッツなどが所属)は新たに Torkwase Dyson を所属作家に加えた。Dyson の作品テーマは、Black and Brown people のムーヴメントや先祖などのルーツからの解放。(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/market/torkwase-dyson-gray-gallery-representation-1234610337/

KAWSは『コレクターを混乱させ欺くための計算されたスキームがある』とECサービスサイトである Homeless Penthouse を訴えた。このサイトは Jeff Koons や 村上隆 やCHANELのロゴ入り家具や日用品を専門に扱っている(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/news/kaws-lawsuit-homeless-penthouse-1234610714/

米国マサチューセッツのある男性は遺品セールで$30でドローイングを購入したが、このドローイングは Albrecht Dürer の真作で約56億円の価値があることが判明。現在ロンドンの Agnews Gallery で展示しており購入希望者を探している(artnet)
https://news.artnet.com/market/four-years-ago-massachusetts-man-bought-drawing-30-estate-sale-may-authentic-durer-worth-eight-figures-2037727

メトロポリタン美術館は、Oscar L. Tang 夫妻から約140億円の超大型寄付があった。これによりMetは近代・コンテンポラリーアート館の改装や作品購入の充実さをはかれる。NYにはMoMAやホイットニー美術館など既に近現代美術を網羅する美術館はあるが、メトロポリタン美術館としての立ち位置は。Tang は「メトロポリタンのみが人類の芸術的歴史を古代から見れる唯一の美術館でありその流れで近現代美術があることは重要な意味がある」(ArtDaily)
https://artdaily.cc/news/141631/With--125-million-gift--Met-Museum-jump-starts-new-modern-wing

米国ヘッジファンドマネージャーの ケネス・グリフィン は米国憲法の希少な最初の印刷物を約47億円で落札した。アーカンソー州のクリスタルブリッジ美術館(Walmart創業者が建設した美術館)へ貸し出すと発表。入札については、17,000人がお金を出し合った最大のクラウドファンディング『ConstitutionDAO』が準備した入札金額を簡単に飛び越して落札。実際の入札で$14Mまで上がり$1M毎の入札であったが、グリフィンはそこで$30M!と自身で高額な金額を指して落札した。(槍を投げた、ですかね…。)(artnet)
https://news.artnet.com/market/billionaire-collector-kenneth-griffin-new-owner-constitution-2037919

■海外アートオークション情報

12月7日 フィリップス NY デザイン(家具)セール
https://www.phillips.com/auctions/auction/NY050521

12月8日 サザビーズ NY デザイン(家具)セール
https://www.sothebys.com/en/digital-catalogues/important-design-6

12月9日 フィリップス ロンドン NewNow 
https://www.phillips.com/auctions/auction/UK010821

12月9日 クリスティーズ NY デザイン(家具)セール
https://www.christies.com/en/auction/design-29120/

12月15日 クリスティーズ NY ファーストオープン(オンライン)
https://onlineonly.christies.com/s/first-open-online-post-war-contemporary-art/lots/3209

12月17日 サザビーズ NY コンテンポラリーアート(オンライン)
https://www.sothebys.com/en/buy/auction/2021/contemporary-art-2


著者

大胡 玄 (おおご げん)

大学卒業後
1998年 コーンズアンドカンパニーリミテッド
2004年 ニューヨーク大学教育学部スタジオアーツ写真専攻 修士課程修了
2004年 クリスティーズ(NY) 日本・韓国美術部門
2007年 クリスティーズ ジャパン
アジア現代アート及び NY・Londonのコンテンポラリーアート
個人コレクターを中心に美術品全般の出品/落札に携わる
2019年 株式会社アマナ ARTshelfプロジェクト
2021年 大胡アートアドバイザリー合同会社 設立