海外アートマーケットNews Picks!!:2022年4月後半

香港のオークションは引き続き活況に終わり、5月のNYも良い状態が続くと思われます。パンデミックを機にアートマーケットのプレーヤーの世代交代が急速に進んでいるように思います。今回はNFTの記事を全く見ませんでした。

■海外アートニュース

ミレニアル世代(1981年−1996年生まれ)はどのようにアートマーケットに挑み・変えようとしているのか。
UBSレポートによるとミレニアル世代の30%は約1億円以上の作品を購入している。Hiscoxレポートによると、69%はオンラインで作品を購入している、また35歳以下の92%はインスタグラムから情報を得ている。パンデミックは、家にいる時間を増加させオンラインに関わる時間を増加させた。
ミレニアル世代は高学歴である。同じ年齢のX世代(1960年中頃−1970年終盤生まれ)と比較するとX世代は29%に対しミレニアル世代の39%は大学を卒業している。
購入動機は型破りな技法や材質を好み、感情的な利益がモチベーションとなっていることが多い。この為古典的な絵画や19世紀絵画などはそぐわない。
ミレニアル世代はアイデンティティーが重要な要素でもあり、作家にもそのような背景や作品を求める傾向がある。
今後徐々にミレニアル世代の存在が増加し、ギャラリー、オークション会社、アートディーラーはオンラインをいかに活用できるかを模索し、若い世代の取り込みが必須となり、それは美術館にも求められる。
ミレニアル世代は、オンラインプラットフォームを通じて、アーティストやギャラリーと”直接”繋がっているので、このポイントをいかに拡大できるか(Forbes)
https://www.forbes.com/sites/forbesbusinesscouncil/2022/04/13/how-millennials-are-challenging-and-changing-the-art-market/

サウジアラビアの王族たちは、王太子であるムハンマド・ビン・サルマーンの規制により現金を捻出する為、過去30年間に購入した様々な資産(不動産・ヨット・美術品)をこの数年間で手放し始めている。約200億円でロンドン西部の不動産やロンドン市内のマンションを約360億円で2020年に売却。またパリ・エッフェル塔近くのマンションは2020年に約100億円で売却(美術品については具体的な記載無し)(The Wall Street Journal)
https://www.wsj.com/articles/saudi-royals-are-selling-homes-yachts-and-art-as-crown-prince-cuts-income-11650792780

4月27日にサザビーズ香港ではイブニングセールが開催され、不安定な経済状況の中、いくつかの作品は高額記録を出し総額約200億円の売り上げを達成した。
ピカソ、1937年作のドラ・マールは日本人コレクターが約27億円で落札と公表(artnet)
https://news.artnet.com/market/sothebys-hong-kong-spring-2022-2105773

イタリアのコレクター Patrizia Sandretto Re Rebaudengo は50年以上手のつけられていないベネチアの島をアートの展覧会やパフォーマンスができる施設へと変えていくことを発表。彼女のこのようなプロジェクトはトリノとグアレーネに続き3都市目(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/news/patrizia-sandretto-re-rebaudengo-venice-san-giacomo-space-1234626544/

バスキアのペインティングを購入する45億円の資金がなくても大丈夫。300ドルのバービー人形はいかがですか?最近はライセンスビジネスでバスキアの作品図柄はいたるところで再販されている、バービー人形から、ユニクロ、ベアブリック、イブサンローランまで(artnet)
https://news.artnet.com/style/basquiat-merch-2100836

クリスティーズはホログラムを活用した新技術の製品を利用してオークション出品作品であるドガを海外で展示した。国際輸送の煩雑なやり取りや輸送代を抑える為(artnet)
https://news.artnet.com/market/christies-touring-edgar-degas-hologram-around-world-advance-anne-bass-sale-2104580

ARTBnkによる2022年上四半期のアートマーケットレポート(ARTBnk)
https://www.artbnk.com/blog/2022-q1-market-report

米国ワシントンD.C.ではアジア系米国人の歴史と文化に特化した国立博物館の設置が下院を賛成で通過し、上院へ送られることとなった(artnet)
https://news.artnet.com/art-world/national-museum-asian-pacific-american-history-2105597

米国フロリダ州タンパのタンパ美術館は拡張工事の支援として、地元の不動産業 Dick Corbett から約30億円の寄付を受けた。これにより世界規模の展覧会も招致できる改築を可能にした(Tampa Bay Times)
https://www.tampabay.com/life-culture/arts/visual-arts/2022/04/25/tampa-museum-of-art-receives-25-million-gift-for-its-expansion/

ロサンゼルスのダイチ・プロジェクトは有名なエドゥアール・マネによる「草上の朝食」の画題をテーマに現代アーティスト(約35名)が独自に解釈した作品群の展覧会を開催(Cultured Magazine)
https://www.culturedmag.com/article/2022/04/18/at-jeffrey-deitch-in-los-angeles-a-famous-picnic-is-reexamined

パリ近代美術館の学芸部長などを勤めた Daniel Marchesseau はオルセー美術館の分館改築費用を寄付する為、50年以上親交のあった Lalanne の作品18点をサザビーズのオークションに出品する。売上金のうち約6億円をオルセー美術館に寄付する。Daniel は今年75歳、Lalanne は2008年に他界しており、自宅で共に暮らしてきたコレクションだが次の人の手に渡ることは今のタイミングだと考えた、とコメント。(artnet)
https://news.artnet.com/market/lalanne-sculpture-auction-musee-dorsay-2105539

オーストラリア・ビクトリア国立美術館は、Lindsay Fox(オーストラリアで4番目の資産家。運送会社を中心に拡大、成功した)が約120億円もの過去最大の寄付を受けた。(The Guardian)
https://www.theguardian.com/australia-news/2022/apr/19/lindsay-and-paula-fox-donate-a-record-100m-for-national-gallery-of-victoria-space

香港M+美術館は、北京からの取り締まりの影響か中国人作家の政治的意味合いのある作品3点を展示から外した。美術館側は「通常の掛け替え作業の一貫」と回答(artnet)
https://news.artnet.com/art-world/political-chinese-paintings-removed-m-plus-hong-kong-2102659

ベニスビエンナーレで何人かのアーティストらは今の仕組みを壊したいと思っている。(例えば国別パビリオンという方式は時代に合っているのか?)。力のあるアートブローカーやディーラーはベニスに来て全力で活動している(artnet)
https://news.artnet.com/art-world/venice-biennale-scene-report-2104294

ベニスビエンナーレのベストパビリオン 10館(ARTnews)
https://www.artnews.com/list/art-news/artists/venice-biennale-2022-best-national-pavilions-1234626216/

■海外アートフェア情報

Tefaf アートフェア NY 5月5日(VIPプレビュー)、6日−10日(一般公開)
https://www.tefaf.com/fairs/tefaf-new-york-spring

フリーズ NY 5月18日(VIPプレビュー)、19日−22日(一般公開)
https://www.frieze.com/video/introducing-frieze-new-york-2022

アートバーゼル 香港 5月25・26日(VIPプレビュー)、27日(ベルニサージュ)、28・29日(一般公開)
https://www.artbasel.com/hong-kong/at-the-show

アートバーゼル バーゼル 6月14日・15日(VIPプレビュー)、16日−19日(一般公開)
https://www.artbasel.com/basel/at-the-show

■海外アートオークション情報

5月9日 クリスティーズ NY トーマス&ドリス アマン コレクションセール
https://www.christies.com/en/auction/the-collection-of-thomas-and-doris-ammann-evening-sale-21508-nyr/

5月10日 クリスティーズ NY 21世紀アート イブニングセール
https://www.christies.com/en/auction/21st-century-evening-sale-20975-nyr/

5月13日 クリスティーズ NY デイセール
https://www.christies.com/en/auction/post-war-and-contemporary-art-day-sale-29245/

5月16日  サザビーズ NY Mackloweコレクションセール
https://www.sothebys.com/en/buy/auction/2022/the-macklowe-collection

5月18日  フィリップスNY イブニングセール
https://www.phillips.com/auctions/auction/NY010322

5月19日  サザビーズ NY イブニングセール
https://www.sothebys.com/en/buy/auction/2022/contemporary-art-evening-sale-2

5月19日 フィリップス NY デイセール モーニングセッション
https://www.phillips.com/auctions/auction/NY010422

5月19日 フィリップス NY デイセール アフタヌーンセッション
https://www.phillips.com/auctions/auction/NY010522

5月20日 サザビーズ NY デイセール 
https://www.sothebys.com/en/buy/auction/2022/contemporary-day-auction-2


著者

大胡 玄 (おおご げん)

大学卒業後
1998年 コーンズアンドカンパニーリミテッド
2004年 ニューヨーク大学教育学部スタジオアーツ写真専攻 修士課程修了
2004年 クリスティーズ(NY) 日本・韓国美術部門
2007年 クリスティーズ ジャパン
アジア現代アート及び NY・Londonのコンテンポラリーアート
個人コレクターを中心に美術品全般の出品/落札に携わる
2019年 株式会社アマナ ARTshelfプロジェクト
2021年 大胡アートアドバイザリー合同会社 設立