タイトル:海外アートマーケットNews Picks!!:2022年9月

■海外アートニュース

11月にガゴシアン・ギャラリーで、この1年で人気急上昇中、オークションの価格も高騰する新進気鋭アーティストで(ラリー・ガゴシアンと付き合ってるとゴシップのある)アンナ・ウェイアントのデビュー・ショーが行われる。価格は少なくとも約数千万円と言われており、キャンセル待ちは限りなく続く模様(artnet)
https://news.artnet.com/market/anna-weyant-fall-solo-show-2171096

ロサンゼルスのバンクシーの壁画のある建物全体が入札にかけられている。壁画を除く建物も1914年に建てられた歴史的建造物とみなされ、建物のみで1600万ドル(約23億円)の価値があるという。Dunlap は大きさ 3.6m×10m のバンクシーの壁画のみで、少なくとも1000万米ドル(約14億円)の価値があると見積もっている。入札は10月末まで受け付けている(HYPEBEAST)
https://hypebeast.com/2022/9/los-angeles-banksy-girl-on-a-swing-building-auction

K-POPスターのRMがロサンゼルス・カウンティ美術館所蔵の韓国伝統花嫁衣裳の修復に資金を提供し、韓国美術のカタログの作成を支援するためにさらに1億韓国ウォン(約1,000万円)を寄付する計画であることが発表された。(The Art Newspaper)
https://www.theartnewspaper.com/2022/09/15/btss-rm-funds-restoration-of-traditional-korean-silk-robe-in-collection-of-los-angeles-county-museumand-reveals-further-gifts

マーヴィン・ゲイに触発され、政治的・社会的言説に焦点を当てた「What's Going On」展が、ワシントンD.C. のフロリダのビックコレクターであるルベル美術館の開館を記念して開催された。展覧会の目玉はキース・へリングがゲイとボブ・マーリーの音楽を聞きながら1日で仕上げたという連作で、このシリーズは環境破壊、戦争、抑圧、差別、などを主なテーマとしている。(The Art Newspaper)
https://www.theartnewspaper.com/2022/09/06/rubell-museum-washington-dc-opening-marvin-gaye-inspired-exhibition

9月24日~10月4日まで開催されるサザビーズのオンラインセールに、著名アーティストが制作したジュエリーが160点以上出品される。ルイーズ・ブルジョワ、アレクサンダー・カルダー、アニッシュ・カプーア等の作品が含まれる。これらは、装飾品としての魅力だけでなく、ストーリー性の魅力を持っている。(Galerie Magazine)
https://galeriemagazine.com/artist-made-jewelry-sothebys/

NFTの販売が米国ペンシルバニア州とワシントン州で課税対象に。売上税と使用税の対象となるデジタル資産とされる。現行法を解釈しての課税のため、遡及して徴収する権限を有している。IRSはこの件に関してさらなるガイドラインを発行する予定。(Artforum)
https://www.artforum.com/news/sale-of-nfts-now-taxed-in-two-us-states-89237

ウォルフガング・ティルマンスのNY近代美術館での回顧展は、今年最高の展覧会の1つ。床から天井まで投影されたビデオは、題材としては平凡だが壮大でこれまでにない方法。ジョージア・オキーフの貴重な紙の作品も展示され、写真を通して世界のあらゆる側面を表現する方法を見つけるという、叙事詩的な探求をしているアーティストにとって意味のある展覧会となった(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/reviews/wolfgang-tillmans-museum-of-modern-art-review-1234638711/

強烈な色彩アーティスト、クリスティーナ・クォールズ。様々な色で塗られた肌や、痛みと喜びでねじれた人物が描かれている。彼女は親密性について深く考えることが多く、新作にはその多角的アプローチが多く表現されている。1985年生まれ、Yaleの修士課程修了し、ベニスビエンナーレで出展、サザービズでは5億円以上で作品は落札され9月からメガギャラリーであるハウザー&ワースで個展が始まる。華々しい。(The Cut)
https://www.thecut.com/2022/09/artist-christina-quarles-solo-exhibition.html

サザビーズはアーティストが作品をオークションに直接委託できる、新しい事業 ”Artist Choice” を開始。9月30日にニューヨークで開催される、サザビーズのコンテンポラリーキュレーションオークションで始まる。Casey Kaplan Gallery の Kevin Beasley、Jeffrey Deitch の Kennedy Yanko、Almine Rech の Vaughn Spann と Alexandre Lenoir を含む7人のアーティストが作品を直接販売に委託し、作品の価格は 15,000 ~ 120,000 ドル(artnet)
https://news.artnet.com/market/sothebys-launches-artists-choice-a-new-venture-that-enables-artists-to-consign-work-directly-to-auction-2172043

NY近代美術館は総額7000万ドル(約100億円)の美術品を11月にサザビーズのオークションにかけ、美術館のデジタルフットプリント(デジタルで履歴管理)を拡大。出品予定の作品の中には、パブロ・ピカソ(推定2000万ドル~3000万ドル)、オーギュスト・ルノワール(推定300万ドルから400万ドル)、フランシス・ベーコン(3500万ドル)等がある。売却額は7000万ドルから1億ドルになると予想されており、大部分は博物館のデジタルメディアとテクノロジーのための寄付金の設立と、MoMAが「新しいデジタル買収」として特徴づけているものに使われるという。(Artforum)
https://www.artforum.com/news/moma-to-auction-70m-in-art-to-expand-museum-s-digital-footprint-89249

ニューヨークを拠点とし、世界中の学芸員の活動を支援する非営利団体 Independent Curators International の2022年レオ賞は、キャンディス・ホプキンスに贈られる。ホプキンスは、先住民族のアーティストの作品を支援、発表、執筆する方法の新しい道筋を示した。毎日歴史を作る学芸員の仕事の可能性を表している。(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/news/candice-hopkins-ici-2022-leo-award-1234639438

Asia Now Paris が10月に開催予定の75ギャラリー出展リストを公開。「西アジアからアジア太平洋地域までの40か国以上」のアジア全体のアートを展示することに焦点を当てており、参加ギャラリーのリストにはヨーロッパの主要なギャラリーも含まれている。10月20-23日(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/market/asia-now-paris-2022-exhibitor-list-1234638699

ピカソの没後50周年を記念して、フランス政府とスペイン政府は共同で世界各地での展覧会を企画している。パリのポンピドゥセンターから米国のノースカロライナまで総数42館での企画。テーマは ”Picasso Celebration 1973-2023” 。この展覧会は、伝統遺産と原則について深い知識を持ち、古典主義と芸術における現代的な問題の両方を理解する本質的にヨーロッパの芸術家のキャリアを強調することを目的としている。(artnet)
https://news.artnet.com/art-world/picasso-anniversary-celebration-museums-2174113

ソーシャルメディア界のスター「ジェリー・ゴゴシアン」がインスタグラムのアルゴリズムによって提案された作品のみでキュレーションした販売展覧会をサザビーズNYのギャラリースペースで開催。マーク・クイン、ローナン・デイ=ルイス、サラ・ティボーなど20人のアーティストの作品が展示される。クインの作品は250,000ドル、デイ=ルイスとティボーの作品はそれぞれ 11,500 ドルと 15,000 ドルで出品される(artnet)
https://news.artnet.com/market/jerry-gogosian-sothebys-sale-instagram-2179326

フィリップスは中国の Yongle オークションハウスと提携し、中国での足掛かりと拡大を狙う。中国のコレクターのコミュニティに直接サービスを提供できるように。今秋11月のフィリップス香港オークションから、Yongle の北京事務所から電話入札が可能になったりする。フィリップス香港は西カオルーン地区に新オフィスが来年完成。2022年状半期のフィリップスの世界売上高40%はアジアの入札者(artnet)
https://news.artnet.com/market/phillips-yongle-2179946

クリスティーズは11月NYでのポール・アレンのコレクションセールのうち15点を先行発表。そのうち3点は、最低価格が約145億円という。美術品市場で最も高価なコレクションセールとなることが想定され、合計150点、総額約1,500億円以上1となることが予想される。収益は全て、アレン氏の意向に沿って、慈善活動に充てられるという。(artnet)
https://news.artnet.com/market/christies-paul-allen-2180579

アートバーゼルマイアミビーチは、20周年記念エディションとしてこれまでで最大の展示会を行う。総出展ギャラリーは283。全ギャラリーリスト。(多過ぎ。。)(artnet)
https://news.artnet.com/market/art-basel-miami-beach-2022-exhibitors-2178572

グラフィティ・アート専門の新たな常設展示スペースがロサンゼルスに誕生した。Beyond the Streetsと名付けられ、コレクターからの貸し出しや新規販売作品など様々なプログラムが提供される。1つのテーマまたは個々のアーティストを6〜8週間集中して展示。来場者は無料。(artnet)
https://news.artnet.com/art-world/beyond-the-streets-launches-gallery-2178224

スイスで元々倉庫業を営んでいるアートディーラーのイヴ・ブーヴィエが、シンガポールのフリーポート倉庫を中国の暗号資産王に売却、購入時の半額以下で売却し大損害を被る。(2010年に$70Mで購入し$28Mで売却)ブーヴィエに残る美術品の保管・輸送のための事業は、ルクセンブルクで苦境にあるフォルティウス・アート事業だけに(artnet)
https://news.artnet.com/market/swiss-dealer-yves-bouvier-sells-his-singapore-freeport-to-a-chinese-crypto-magnate-for-a-major-loss-2178939

英国作家トレーシー・エミンは自身のがん体験に関する新作 ”Cloud of Blood” を制作し来月クリスティーズで売却する。作家の故郷ケントタウンに購入した新進気鋭のアーティスト育成が目的事業基金に。15人のアーティストが創作活動ができ、24時間入退室可能でWi-Fi完備。ブックショップもある。作家は入院中に「自分には何ができるのか」考えた。作品は約1億円で売却予定(The Guardian)
https://www.theguardian.com/artanddesign/2022/sep/22/tracey-emin-to-auction-work-to-fund-margate-studios-for-emerging-artists

クリスティーズがNFTアートのオンチェーン(直接取引)プラットフォームを立ち上げる。アンチマネーロンダリングや売上税などの規制ツールを組み込むことで、老舗と新しいNFTコレクターの両方が Christie’s 3.0 との取引で安心できる包括的なソリューションを構築。(CoinDesk)
https://www.coindesk.com/business/2022/09/27/christies-auction-house-announces-on-chain-nft-art-platform/

ポーランドのトップコレクターであるグラジナ・クルチェクが現代アートコレクションから約200点の作品をオークションに出品予定。自身のプライベートミュージアムであるスーシュ美術館(スイス・チューリッヒから車で1時間)への新規購入基金提供と芸術分野での女性の活躍の促進を図る(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/news/grazyna-kulczyk-sells-art-muzeum-susch-1234640637

コレクターの読書リスト:すべての新進コレクターが所有すべき7冊の本。世界で最も優れたディーラーの1人の伝記から、アート市場の上層部の暴露まで、市場エコシステムのコツを学ぶ入門書まで(ARTnews)
https://www.artnews.com/list/art-news/product-recommendations/essential-books-budding-art-collector-1234640210/

■海外アートフェア情報

FRIEZE ロンドン 10月12日(プレビュー)、13日-16日(一般公開)
https://www.frieze.com/fairs/frieze-london

PAD ロンドン 10月10日、11日(プレビュー)、12日ー16日(一般公開)
https://www.padesignart.com/en/london/[

■海外アートオークション情報

10月6日 サザビーズ 香港 デイセール
https://www.sothebys.com/en/buy/auction/2022/contemporary-day-auction

10月7日 サザビーズ 香港 イブニングセール
https://www.sothebys.com/en/buy/auction/2022/contemporary-evening-auction-2

10月13日  フィリップス ロンドン 20世紀&コンテンポラリーアート デイセール
https://www.phillips.com/auctions/auction/UK010722

10月13日  クリスティーズ ロンドン 20 / 21世紀 イブニングセール
https://www.christies.com/auction/20th-21st-century-london-evening-sale-20666-cks

10月14日  フィリップス ロンドン 20世紀&コンテンポラリーアート イブニングセール
 https://www.phillips.com/auctions/auction/UK010622

10月14日  クリスティーズ ロンドン 戦後&コンテンポラリーアート デイセール
https://www.christies.com/auction/post-war-and-contemporary-art-day-sale--20667-cks

10月14日  サザビーズ ロンドン コンテンポラリー イブニングセール
https://www.sothebys.com/en/buy/auction/2022/contemporary-evening-auction-3

10月15日  サザビーズ ロンドン コンテンポラリー デイセール
https://www.sothebys.com/en/buy/auction/2022/contemporary-day-auction-4


著者

大胡 玄 (おおご げん)

大学卒業後
1998年 コーンズアンドカンパニーリミテッド
2004年 ニューヨーク大学教育学部スタジオアーツ写真専攻 修士課程修了
2004年 クリスティーズ(NY) 日本・韓国美術部門
2007年 クリスティーズ ジャパン
アジア現代アート及び NY・Londonのコンテンポラリーアート
個人コレクターを中心に美術品全般の出品/落札に携わる
2019年 株式会社アマナ ARTshelfプロジェクト
2021年 大胡アートアドバイザリー合同会社 設立