Come Out (1966) I

Courtesy the artist, Jack Shainman Gallery, New York and carlier | gebauer, Berlin/Madrid

Richard Mosse | リチャード・モス
Come Out (1966) I
2011
Digital c-print
152.4 x 121.9 cm

リチャード・モスはアートとフォトジャーナリズムの両方の手法を用いて、世界中の紛争や社会問題、人々の苦難を写し続けています。世界各国の紛争地での撮影を経て、彼が向かったのはコンゴ民主共和国(旧ザイール)、中でも戦闘の激しい南キヴ州で、武装勢力と行動を共にしながら2年間を過ごしました。この地では内戦が過去15年以上も続き、40以上の武装勢力が多様な利害関係のもと、戦闘を繰り広げています。善悪の区別も失われ、残されたのは残忍で痛ましい犠牲の数々でした。

この作品に使用された16mm赤外線フィルム(コダック・エアロクローム)は、1940年代に戦場でカムフラージュされた敵を識別するために米軍が開発したものです。このフィルムを使うと、植物に含まれるクロロフィル(葉緑素)や緑色がピンク色やマゼンダに写り、肉眼では識別できない敵の手がかりが写真を通して見えるようになるのです。

あざやかなピンク色で映し出された風景には、目に見えない惨劇の傷跡が潜んでいます。惨劇の記録と美的価値の、両極端の二つの世界が作品の中で両立しています。

モスは「私は自分の作品の意義をできるだけオープンにし、特に教訓的な表現を避けようと努力しています。だから、見る人は、この作品や珍しい色に何かを感じ取ることができる。(中略)この作品を見て、コンゴ東部の人道的な災害をもっとよく見ようと思ってもらえれば、それは素晴らしいことです。」と語っています。

(解説:塩原 将志 / 翻訳:辻 愛麻)