鏡の向こう
Chiharu Shiota | 塩田 千春
鏡の向こう
2012
Water-based crayon, pen, thread on paper
32 x 24 cm
椅子に腰かけた黒い人影が、鏡を見つめています。視線の先には、鏡に映ったもうひとりの自分の姿。見つめる人物とその鏡像の間には糸が縫われています。
今回の作品の「糸」は、存在するものと存在しないものをつなぐ手がかりとして描かれています。ここでの存在しないものは鏡の中の像ですが、黒い人影よりも淡く描かれており、この世に存在しないもの(=死者)を示唆しているようにもとれます。
塩田千春は、1972年大阪に生まれ、現在はドイツ・ベルリンを拠点に活動しています。生と死という人間にとって根源的な問題をテーマにしており、場所やものに宿る記憶といった、目に見えない存在を糸で紡ぐことで表現する大規模なインスタレーションを中心に、映像、立体、写真など多様な手法で作品を発表しています。
(解説 & 翻訳:原田 美緒)