海外アートマーケットNews Picks!!:2022年3月後半

■海外アートニュース

ピカソの研究者であり長年親交のあった、故ジョン・リチャードソンが生前まとめたピカソの1933〜1943年の時代についての書籍が昨年出版された。作家の生の声を説明する文章が多い書籍は貴重(The Guardian)
https://www.theguardian.com/books/2022/mar/19/a-life-of-picasso-volume-iv-john-richardson-review-surrealist

アジア現代アートの蒐集に貢献し、Yuz 美術館を設立したコレクター、Budi Tek 氏が6年間の闘病の末、膵臓がんで逝去した。65歳。(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/news/budi-tek-collector-dead-1234622352/

英国オークション会社のボナムズは、世界のローカルオークション会社の買収を積極的に進めている。昨年は、スウェーデンの Bukowskis を買収。その後、英国の the Market を買収。今回は米国ボストンの Skinner と、デンマークの Bruun Rasmussen を買収。(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/news/bonhams-skinner-acquisition-expanison-1234622024

NFTアートで高額な落札結果を出したアーティスト、”Beeple”の本人 Mike Winkelmann(40歳)が顔出しでさまざまなインタビューに答える(The Washington Post)
https://www.washingtonpost.com/magazine/2022/03/22/digital-artist-known-beeple-im-just-trying-expand-peoples-idea-what-art-is/

全米芸術基金(National Endowment for the Arts)と合衆国商務省がまとめたレポートでは、米国の美術業界の経済状況は未だパンデミック前の半分でしかない。パンデミックで140万人の失業者が出た。回復の兆しはあるが、観客動員のアート関連が完全に回復していない。美術業界の2019年の失業率は3.7%であったが、2021年は7.2%(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/news/us-arts-industry-covid-economy-survey-1234622701

米国のビリオネア、マイケル・スタインハートがかつて所有していた古代美術39点はイスラエルに返還される。母国の遺跡から盗難品という認定を受けており、既に180点(約80億円相当)のコレクションを所有するスタインハートには追加購入を禁止する処置がマンハッタン地方検事が指示。コレクターにこのような禁輸措置をすることは異例(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/news/michael-steinhardt-israel-artifacts-repatriated-1234622639

5月フリーズNYに出展するギャラリー全リスト(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/market/frieze-new-york-2022-exhibitor-list-1234622093/

クリスティーズは5月NYでコレクター Anne Bass の約300億円相当の印象派・近代美術コレクションをオークションに。(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/market/anne-bass-collection-christies-sale-1234623514

カタールは、ドーハで3つの新しい博物館を建設予定と発表。現代アート・東洋美術の博物館・カタール自動車博物館。各施設の建築はプリツカー賞を受賞したアレハンドロ・アラベナやヘルツォーク&ド・ムーロン、レム・コールハースが担当。湾岸諸国に新たな芸術と文化の中心地を建設(Artforum)
https://www.artforum.com/news/qatar-reveals-ambitious-plans-for-three-new-cultural-institutions-88311

オーストラリアのビクトリア国立美術館は約1,500億円をかける改築を行い現代アートなどの展示スペースを拡充する。2028年竣工予定(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/news/national-gallery-of-victoria-contemporary-design-1234621920

NYのホイットニー美術館の従業員は、公平な賃金などを訴え組合を発足させようとしているが、賃金など
に関して美術館側が全く話題にしようとしない、とホイットニービエンナーレのVIP招待日にビラを配り窮状を訴えた(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/news/whitney-biennial-union-event-1234623366

大英博物館はパルテノン神殿の大理石彫刻の3Dスキャン要望を断ったことで、デジタル考古学研究所から訴えられている(The Guardian)
https://www.theguardian.com/artanddesign/2022/mar/29/british-museum-facing-legal-action-parthenon-marbles-3d-scan-refusal

UBSアートレポートから7つのポイント:
① 全世界の売り上げは約8兆円でパンデミック前を超えた。
② ギャラリー関連の売り上げはこのうち約4.2兆円。回復はしているが2019年のレベルには達していない。
③ オークションは絶好調。素晴らしい作品がオークションに出品され続けているのも特徴。
④ 2021年はNFTの売り上げも顕著であった。クリスティーズの売り上げは約160億円・サザビーズは約90億円。サザビーズによると、NFT落札者の78%は新規顧客、このうち半分以上は40歳以下。
⑤ オンラインセールは、売り上げは伸びているが急激ではない。2021年は人員導入のオークションが多く復活した為。しかし今後も必要なプラットフォームではある。
⑥ アートフェアは未だ混沌としている。売り上げは復調しているが開催回数はまだ少なくパンデミック前には達していない。
⑦ 有力コレクターは2022年は買いたいムードが高まっている。UBSレポートでは超富裕層の53%は2022年は更に美術品を購入する予定だと回答。そのうち56%は、デジタルアートの購入に興味がある。(artnet)
https://news.artnet.com/market/art-market-trends-2022-2090938

■海外アートフェア情報

フリーズ NY 5月18日(VIPプレビュー)、19日ー22日(一般公開)
https://www.frieze.com/article/frieze-new-york-2021-shed

アートバーゼル 香港 5月25・26日(VIPプレビュー)、27日(ベルニサージュ)、28・29日(一般公開)
https://www.artbasel.com/hong-kong/at-the-show

■海外アートオークション情報

4月27日 サザビーズ 香港 イブニングセール
https://www.sothebys.com/en/digital-catalogues/contemporary-evening-auction-hk1204

4月28日 サザビーズ 香港 デイセール
https://www.sothebys.com/en/buy/auction/2022/contemporary-art-day-sale

5月16日  サザビーズ NY   Macklowe コレクションセール
https://www.sothebys.com/en/buy/auction/2022/the-macklowe-collection

5月18日  フィリップス NY   イブニングセール
https://www.phillips.com/auctions/auction/NY010322

5月19日  サザビーズ NY   イブニングセール
https://www.sothebys.com/en/buy/auction/2022/contemporary-art-evening-sale-2

5月19日  フィリップス NY デイセール
https://www.phillips.com/auctions/auction/NY010522

5月20日  サザビーズ NY  デイセール
https://www.sothebys.com/en/buy/auction/2022/contemporary-day-auction-2


著者

大胡 玄 (おおご げん)

大学卒業後
1998年 コーンズアンドカンパニーリミテッド
2004年 ニューヨーク大学教育学部スタジオアーツ写真専攻 修士課程修了
2004年 クリスティーズ(NY) 日本・韓国美術部門
2007年 クリスティーズ ジャパン
アジア現代アート及び NY・Londonのコンテンポラリーアート
個人コレクターを中心に美術品全般の出品/落札に携わる
2019年 株式会社アマナ ARTshelfプロジェクト
2021年 大胡アートアドバイザリー合同会社 設立