開催レポ【ミネバネ!現代アート タグチアートコレクション展】坂本和也 ワークショップ「私のみどり」(7/20)
「ミネバネ!現代アート タグチアートコレクション」展開幕翌日の7月20日、出展アーティストの1人、画家の坂本和也さんによる夏休みアートワークショップ「私のみどり」を秋田市文化創造館で開催しました。
自然と人の営みに向き合う

ミネバネ!展で展示した坂本和也さんの作品《Landscape gardening》(2014年)は、縦2m×横5mを超える大作です。水草の栽培や植物を育てる行為と絵画表現を往還しながら、制作を続ける坂本さんの作品には、自然と人の営みが交差する地点を静かに見つめるまなざしが宿っているかのようです。
フィールドワークからスタート!

今回のワークショップでは、坂本さんの制作の起点ともいえる自然との関わりを取り入れ、ちょうど見頃を迎えたお堀の蓮を観察する、秋田ならではのフィールドワークからスタート。
坂本さんから鳥取を拠点にした日頃の制作や、参加者のみなさんにワークショップを通して意識してもらいたいことなどをお話いただいたあと、お掘へ出発しました。

照りつける夏の日差しの中、花を咲かせる蓮が一面に広がる美しい光景は、まさに秋田市の夏の風物詩。思わず花に目を奪われますが、今回観察するのは「葉脈」です。
参加者それぞれが葉を選び、葉脈の形や太さ、伸びる方向を丁寧にスケッチしていきます。「蓮の葉って、こんなかたちだったっけ!?」「葉脈までじっくり見たことなかった」など、観察を通して“見る”ことの解像度が上がっていきます。
マスキングに挑戦!

館内に戻ったら、スケッチをもとにマスキング液で葉脈を描きます。マスキングとは“覆い隠す”という意味。少し粘り気のある液状のマスキング液で鉛筆の線をなぞると、キャンバスのほかの部分に色を塗ってもその部分が白く残ります。普段使い慣れない素材で、太さの調整に苦戦しながらも、集中して線を描きました。
「私のみどり」をつくろう

机の上には、既存の緑色の絵の具はありません。
マスキング液で葉脈を描き終えたら、次は「私のみどり」をつくります。坂本さんのテーブルの前に集まり、「私のみどり」について一緒に考えます。
新緑のみどり、ほうれん草のみどり、抹茶色や蛍光グリーン……。
同じ「みどり」でも、人それぞれイメージはさまざまです。観察した蓮の葉の緑をそのまま表現するのか、それとも印象やその日の気分を色で表すのか。参加者は自分と対話しながら、「私のみどり」を探り、絵の具の黄色やピンク、赤などからを選んでいきます。

パレットの上で混ぜて、重ねて、調整して —— 「私のみどり」が少しずつ表れていきます。
キャンバス全体を「私のみどり」に

マスキング液が乾いたら、キャンバス全体に「私のみどり」を塗っていきます。グラデーションにしたり、複数の色味を組み合わせたり、薄く塗ったり、絵の具を盛りながら塗ったり。それぞれのアプローチで、キャンバス全体をみどりに塗っていきます。


最後に、そっとめくるようにマスキングを剥がします。すると、葉脈の部分が白く浮かびあがってきます。 その瞬間、参加者の表情が一斉に輝き、会場からは思わず歓声が!


完成した作品を並べて、参加者のみなさんで鑑賞しました。
まさに千差万別の“みどり”。淡いピンクを帯びたモネの睡蓮を思わせるみどり、元気いっぱいの明るいみどり、美味しそうなみどり。どれもその人自身を映し出すようです。坂本さんも「みなさんの観察力や、色だけでなく塗り方にも工夫していたところに感動しました」と仰っていました。
作品を“見る”だけでなく、“つくる”ことで、作家の思考や表現、そして絵画の世界にぐっと近づく体験になったのではないでしょうか。自然の多様性や表現のゆたかさにも気づく、充実したひとときとなりました。
当日の様子は、こちらの動画でもご覧いただけます。(冒頭から1分50秒頃まで)
夏休みアートワークショップ | 「ミネバネ!」展(秋田県立美術館/秋田市立千秋美術館)関連イベント

おまけ:坂本さんのテーブルにあったこの立体は、制作中にできた絵の具の塊だそう。不思議な生きもののようで、植物のようでもあり、まるでひとつの作品のような存在感です。
広報 稲葉 智子
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展覧会「ミネバネ!現代アート タグチアートコレクション」
夏休みアートワークショップ 坂本和也「私のみどり」
日時:2025年7月20日(日)10:00~12:00
会場:秋田市文化創造館/1F
対象:中学生〜高校生
参加費:500円(材料費)
参加人数:14名
担当:稲葉 智子(タグチアートコレクション 広報)


