© Nigel Cooke, courtesy Pace Gallery Photo: Robert Glowacki, courtesy the artist

Nigel Cooke | ナイジェル・コーク
Siren
セイレーン
2011
220.0 x 369.9 cm
oil on linen backed with sailcloth

イギリス出身のペインターであるナイジェル・コークは、巨大な画面の中に、退廃的かつ幻想的な光景をダイナミックな筆遣いで描き出す作風で知られています。朽ち果てた都市を背景に、骸骨や瓦礫、また筆致の渦に飲み込まれた人の姿が描きこまれている本作は、世界の終わりをも予感させるような不穏な物語が、いままさに起きていることを暗示しているようにも見えます。また画面の中央には、ギリシア神話に登場する怪物でもあり、ヴィクトリア朝時代のイギリスにおいて男性を誘惑する裸婦として描かれてきたセイレーンが地面に座り、周囲の騒々しさが別世界での出来事であるかのような不気味な穏やかさでこちらを振り返っています。

このようにターナーを思わせる荒々しい筆致による自然の描写や伝統的な主題の援用など、コークは従来の美術表現の歴史に対しての言及も行っています。一方で、スニーカーや『CRAP』というタイトルが示す低俗なゴシップ誌など、伝統的な主題に取り組む傍ら現代の消費社会を思い起こさせるモチーフを挿入することで、彼は現代における絵画のあり方をアップデートしていきます。

(解説 & 翻訳:岩田 智哉)