©Hiraku Suzuki

Hiraku Suzuki | 鈴木 ヒラク
GENZO #29
2014
77.0 x 55.0 cm
silver spray paint and silver ink on paper

鈴木ヒラクは1978年宮城県仙台市生まれ。ドローイング(線画)のみならず、彫刻、映像、パフォーマンスなど多岐にわたる手法を用いながら、ドローイングによる表現の可能性を広げている作家です。

本作が含まれる〈GENZO〉シリーズは、黒い紙に幾何学的、または有機的なラインを銀色のペンやスプレーで描いたものです。2014年の国東半島芸術祭に参加した際に、トンネルの暗闇の中で紙の上にスプレーを吹きかけ即興的に描いたことがきっかけとなっています。本シリーズは100以上の作品からなる一群ですが、本作「no.29」は、スプレーとペンで描いた有機的な記号が上下に流れるさまがとりわけ印象的な作品です。宇宙空間に流れる銀河のようでもあり、血管の中を流れる血液のようにも見えます。

鈴木にとって線を「描く」ことは、内面の表出としての線画ではなく、すでに日常に存在している記号の痕跡をなぞり、発掘することであるといいます。〈GENZO〉の語には、「現像」「原像」「幻像」などの意味があり、まさに、発見した痕跡を写真のように浮かび上がらせ定着してゆく作業であることがうかがえます。路上にある石、枯葉、土、木片、アスファルトの切片、その時々の偶然性などから始まるその瞬間の記憶をとどめていく試みは、鈴木が興味を持つ洞窟壁画のように、太古から現代へ続く視覚表現の新たな地平を切り開いています。

(解説:田口 美和)