©︎ Hiroshi Sugito

Hiroshi Sugito | 杉戸 洋
Untitled
無題
2016
52.5 x 65.0 cm
frame size: 66.0 x 78.0 x 5.5 cm
oil on canvas

杉戸洋は1970年愛知県生まれ。幼少期はニューヨークで過ごし、帰国後愛知県立芸術大学日本画科を卒業、国内外で活躍しています。

杉戸の絵画には、家や木、雨、飛行機や船の形など一見子供の絵を思わせるモチーフが描かれることがしばしばあります。しかし、そのかたちは特定の意味を固定させることはありません。ハッキリと言い切らない杉戸の絵画は、抽象と具象の間を行き来しながら絵画と空間の境界もどんどん曖昧にしていきます。作品と鑑賞者の垣根も取り払われ、「言い切らない」作品を見る私たちの想像力もいやおうなく掻き立てられることになります。幾何学的なモチーフの繰り返しとやわらかな色彩がかもしだす独特の詩情も大きな魅力です。

本作は2016年に行われた小林正人、牧嶋タケシとの3人展に出品されました。船のようなかたちは杉戸が好んで使うモチーフですが、極度に抽象化され、まるで家のようにも感じます。そしてその背景は空なのか山なのか海なのか。重力を感じさせない空間構成と自由な色彩感覚、落書きのようなラフな筆致は、私たちが絵画に対して抱く一般的な価値観をたやすくひっくり返してくれます。

さらに本作には、現代絵画には不釣り合いな、古典的絵画のような木製の額縁が作家によってほどこされています。ちょっとした仕掛けですが、絵画と空間の関係、あるいは絵画という存在について、私たちはあらためて気づかされることになるのです。

(解説:田口 美和 / 翻訳:辻 愛麻)