8 Hours

Photography by MIYAJIMA Kei ©︎AOYAMA Satoru, Courtesy of Mizuma Art Gallery

Satoru Aoyama | 青山 悟
8 Hours
2019
52.0 x 70.0 cm
ポリエステルに刺繍

青山悟は1973年生まれ、ロンドンゴールドスミスカレッジテキスタイル科を経てシカゴの大学院で学びました。工業用ミシンを使った刺繍という手法を用い、社会と人間の関係に鋭く切り込む作品を制作しています。

本作もポリエステルの布の全面に刺繍をほどこしてあります。中央の旗はメーデーやレイバーデーのデモやパレードで使われていたもので、もともとの言葉は「8 hours labour, 8 hours recreation, 8 hours rest(8時間労働、8時間余暇、8時間休息」。これは19世紀初頭、イギリス社会主義の父と呼ばれた実業家にして社会運動家のロバート・オーウェンが、労働者の環境改善運動の中で提唱した言葉です。作家はこれを現代風にアレンジし「8 hours labour, 8 hours research, 8 hours rest」としました。背景も当時のデモの風景ではなく、現代の東京の公園です。

ネット社会に生きる私たちは、仕事と睡眠以外は常にスマートフォンやパソコンの画面を見つめ、情報を得るためにひたすら「検索(research)」しているといって過言ではないでしょう。青山が使う工業用ミシンも、産業革命後に生まれた機械の原点であり、労働と密接なかかわりを持った存在です。近年はAIなどテクノロジーの発展で労働の形そのものも変わろうとしています。ミシンによる手仕事で生み出された本作は、これからの新しい労働と生活の関係、テクノロジーと人間の関係を私たちに問いかけています。

(解説:田口 美和 / 翻訳:辻 愛麻)