赤いショールを纏ったマリア・テレーザ

© Julian Opie, courtesy MAHO KUBOTA GALLERY

Julian Opie | ジュリアン・オピー
赤いショールを纏ったマリア・テレーザ
2008
アクリル / アルミ製フレーム
147.8 x 108.8 cm

日本の浮世絵や漫画から影響を受けたオピーは、ゴールドスミス大学卒業後、80年代初期のアートムーブメントのブリティッシュ・ニュースカルプチャーの一人として、国際的に活躍する作家です。

豪華な白のドレスと宝石を身に纏い、真っ赤なショールとピンク色のバラを手に持ちこちらを見つめる女性を描くこの作品は、一見すると伝統的な人物画のようです。一方で顔や体はシンプルな線と点のみの平面で描かれており、空虚で感情がないような印象を受けます。コンピューターを使い、鮮やかな色のグラフィックで表現されているため、広告のようにも見えます。しかし、時代や地位を感じさせるポーズや服装に対比する憂鬱・無機質な表情の人物は、社会規範や固定概念、アイデンティティについて、私たちに疑問を投げかけてるようです。

タイトルにもなっているマリアは、他作品にも例えばストリッパーとして登場しますが、当作品のような風景を前にした煌びやかなドレス姿の彼女は珍しく思われます。顔のパーツが削ぎ落とされ記号のような彼女は、むしろ鑑賞者に自分が何者であるかを問いかけているようです。鑑賞者とイメージの関係性を揺るがすことによって想像を呼び起こし、個人と他者の隔てを曖昧なものとしているのかもしれません。

(解説 & 翻訳:宇治田 麻子)