現代アフリカ文庫:Arts of Africa: The Contemporary Collection of Jean Pigozzi

書名:Arts of Africa: The Contemporary Collection of Jean Pigozzi
発行年:2005
発行:Grimaldi Forum, Monaco (Skira Edition)
種類:コレクション・カタログ(Arts of Africa: From Traditional Arts to the Jean Pigozzi Contemporary Collectionに出品した作品を収録)
言語:英語
会場・開催期日:
Grimaldi Forum, Monaco グリマルディ・フォーラム(モナコ)
2005年7月16日―9月4日

モナコで開催された美術展への出品を機に出版された、世界最大の現代アフリカ美術コレクションであるピゴッツィ・コレクションのコレクションカタログ。同コレクションのディレクターであるアンドレ・マニャン(André Magnin)が編著を務める。『大地の魔術師たち』展を最終日に訪れた資産家ジャン・ピゴッツィ(Jean Pigozzi)は、展覧会のアフリカに関するリサーチを担当したキュレーター、アンドレ・マニャンと出会い意気投合し、コレクションを立ち上げる。このカタログに収録されている、アール・ポピュレールの画家シェリ・サンバ(Chéri Samba)、未来都市の模型的な彫刻で知られるボディス・イセク・キンゲレス(Bodys Isek Kingelez)や、スタジオ写真家だったマリク・シディベ(Malick Sidibé)ら、サブ・サハラの独学の作家たちを見出してきた。マニャンが見出した作家の作品を、ピゴッツィの財力で大量に買い上げ、そのコレクションを用いた展覧会を世界中の美術館等で実施する(注1)。こうしたキュレーションと、見事なプロデュースによって、90~00年代を通じて国際的な現代美術シーンに独学の作家たちを「アーティスト」として認めさせてきた(注2)。2019年にはピゴッツィは、ニューヨーク近代美術館にシェリ・サンバ作品を含む45点のコレクション作品を寄付し、これらのアーティストは美術の「正史」に名を刻むことになる(注3)。
ピゴッツィのコレクターとしての歩みや独自の哲学、マニャンのアフリカへの情熱が語られるエッセイを収録。コレクション形成の経緯と共に、独学の作家のみを扱う方針の背後にある意図を説明し、『大地の魔術師たち』展以来受けてきた「アフリカへのステレオタイプを強化する」との批判にも応答する。2005年当時の、アフリカ現代美術の表象をめぐる白熱した議論が伝わる。マニャンはアフリカ大陸内でのアートのあり方の問題にも言及し、2005年当時オープンしたばかりの、ベナンのジンスー財団について、ローカルなアートエコシステムを根付かせる野心的な試みを評価している(注4)。(表紙のデザインに名前が隠れている。見つけてみよう。)

注1: André Magnin, “A Prospecting Life”, Arts of Africa: The Contemporary Collection of Jean Pigozzi, Milan, Skira, 2005, pp.12-22 参照。
注2:アンドレ・マニャンは、「現在のアートシーンは、我々の選択が間違っていなかったことを証明しているようだ。」”The current art scene seems to have vindicated our choices.” (前掲注1、p.27) と語る。
注3:拙稿「アートシーンのフィールドワークー現代アフリカ美術を取り巻く場と人々」『アフリカ現代文化の今』(青幻舎、2020年)pp.91-92の年表では、1989年から2019年までのマニャンとピゴッツィが手がけた展覧会の歴史もまとめた。
注4:前掲注1、p.33

目次
12 Jean Pigozzi A Collecting Life
22 André Magnin A Prospecting Life
40 Universe of A Collection
213 Everyday Art
357 Appendix


著者

中村 融子 | Nakamura Yuko

京都大学大学院アジアアフリカ地域研究研究科アフリカ地域研究専攻博士課程。東京大学法学部卒業。美術史・人類学の手法を用いて、主にアフリカ現代美術を研究する。美術制度史やアートエコシステムに焦点を当て、近代的美術制度の中心と辺境、陶芸史、現代陶芸もテーマとして扱う。キュレーター、講演等の活動を行っている。
著作に「アートシーンのフィールドワークー現代アフリカ美術を取り巻く場と人々」『現代アフリカ文化の今 15の視点から、その現在地を探る』(青幻舎)がある。