海外アートマーケットNews Picks!!:2026年8月

■海外アートニュース

生成AI
2016年にベルリンで設立されたユダヤ文化デジタル復興プロジェクト(JDCRP)は、昨年リリースした来歴調査ツール「レガシー・エクスプローラー」にAI機能を追加したと発表した。レガシー・エクスプローラーでは現在、所有物カードや写真などを整理した5つのアーカイブを検索できる。発表によると、6つ目のアーカイブは今月後半に追加される予定だ。これにより、これにより略奪品の追跡の性能を格段に上げることができる。(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/news/artificial-intelligence-expands-functionality-jewish-digital-cultural-recovery-projects-provenance-search-tool-1234794876

コンピュータービジョンと視覚知能に特化したAI企業QuantumSpaceは、グラフ技術が美術市場における詐欺との戦いに新たな戦線を切り開いていると述べている。具体的には数千点の美術作品を表す知識グラフのことで、この取り組みが成功すれば、アート市場は主観的な鑑定からデータに基づいた分析へと転換し始めることができるという。この技術は初期段階の関心は集めているものの、広く受け入れられるまでにはしばらく時間がかかるとの予想もある。(diginomica)
https://diginomica.com/can-knowledge-graph-crack-art-worlds-forgery-problem-quantumspace-says-caravaggio-agrees

美術館
フィリピン文化センター(CCP、マニラ)は、カルロス・キホン Jr.氏を同センターの現代美術館のチーフキュレーターに任命した。2021年から改修工事が行われている同センターは来年再開予定だ。キホン Jr.氏はマニラとニューヨークを拠点とする美術史家、キュレーター、批評家。過去2年間、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で東南アジア・東アジア担当の初代C-MAP(現代美術・近代美術展望)研究員を務めた。それ以前は、クアラルンプールのA+ Works of Artでのレスリー=アン・カオの個展、2024年ヴェネツィア・ビエンナーレのフィリピン館など、国際的に数多くの展覧会をキュレーションした経歴を持つ。(ArtReview)
https://artreview.com/carlos-quijon-jr-appointed-chief-curator-of-ccps-contemporary-art-museum

一時期、アメリカの多くの主要美術館が新たなリーダーを探し求めていた。今もその状況は変わらないが、重要なポストのいくつかは埋まりつつある。バッファローAKG美術館は内部昇進を行い、キャスリーン・チャフィーを芸術監督に、ジリアン・ジョーンズを事務局長に任命した。その少し前には、ニュー・ミュージアムが芸術監督のマッシミリアーノ・ジョーニを館長に昇進させた。また4月には、ワシントンDCのハーシュホーン美術館・彫刻庭園で12年間館長を務めたメリッサ・チウが、ニューヨークのグッゲンハイム美術館の館長に抜擢されている。記事ではその他の重要人事についてもまとめる。(artnet)
https://news.artnet.com/art-world/museum-director-openings-2797195

カナダの先住民芸術センター(IAC)の所蔵品のうち132点が所在不明になっていると判明してから2年近くが経過したが、111点の作品が依然として行方不明のままだ。2024年の内部監査以降、カナダ先住民関係・北部開発省(CIRNAC)は行方不明だった美術品17点を発見したが、現在も残りの作品を探しているという。IACには約5,000点の作品が登録されており、その推定価値は1,440万カナダドル(約16億6,000万円)と言われている。(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/news/artworks-still-missing-indigenous-art-centre-canada-1234795609

美術館収蔵
最近、美術館が収蔵品を共同購入する事例が増えている。メトロポリタン美術館は昨年、クリーブランド美術館と共同で18世紀の版画コレクションを購入した。他にも、ロンドンのナショナル・ポートレート・ギャラリーは、320万ドルのウィリアム・ドブソンの自画像をテート美術館と共同購入している。資源を共有することは、19世紀から20世紀にかけて見られた競争的なコレクション構築からの、より広範な方向転換を反映していると言える。財政的な圧力の高まりが大きな役割を果たしていることは否定できないが、より深い機関間の連携や専門知識の共有に対するニーズの高まりも同様に重要だ。(artnet)
https://news.artnet.com/art-world/why-museums-are-teaming-up-to-buy-art-2790092

展覧会
2026年秋に必見の米国美術館展覧会15選。ジョージア・オキーフのあまり知られていない作品から、めったに展示されないブランクーシの彫刻まで、今シーズンの美術館プログラムは新たな発見をもたらすことが期待される。記事ではその詳細を紹介する。(Cultured Magazine)
https://www.culturedmag.com/article/2026/08/24/art-fall-museum-shows-2026-us/

ラグジュアリー市場
高級品市場全体が顧客減少に苦しんでいるという事実は明白だ。2022年から2024年の間に、顧客基盤の8分の1に相当する5,000万人の顧客が市場から離脱した。消費者の購買意欲の低迷、中国の需要の不安定さ、そして長年にわたる価格上昇が多くの消費者を遠ざけていると考えられている。では、なぜオークションハウスの高級品は売上を伸ばしているのか?記事ではこれらの関係や違いについて深掘りする。(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/market/why-are-auction-houses-luxury-sales-booming-1234794874

フリーズ・ソウル
来年のフリーズ・ソウルは、現在の会場(COEX)の再開発計画に伴い、ザハ・ハディッドが設計した文化複合施設である東大門デザインプラザ(DDP)で開催されることが発表された。この移転により、フリーズはサムチョン洞(PKM、ククジェ、ヒュンダイなどの地元有力ギャラリーの本拠地)、梨泰院、そしてサムスンの重要なリーウム美術館がある漢南洞といったギャラリー街からほぼ等距離になる。韓国発祥のKIAFは引き続きCOEXで開催されるという。(artnet)
https://news.artnet.com/market/frieze-seoul-move-ddp-2797862

大相続時代
大手美術商のラリー・ガゴシアンは、高齢のベビーブーマー世代が亡くなり、若い世代は親が収集したものを所有することに関心を示さないことから、今後数年間で膨大な量の美術品が市場に出回る可能性について問われ、「おそらく、価格が下落するのではないかという懸念がある」と語った。しかし81歳のこの市場の巨人は、別の可能性も見ている。それは、優れたコレクターは価格の下落を「買いのチャンス」と捉えるだろうということだ。「私はそれについて心配していません」と彼は付け加えている。(ARTnews)
https://www.artnews.com/art-news/opinion/larry-gagosian-great-wealth-transfer-art-market-1234795706


著者

大胡 玄 (おおご げん)

大学卒業後
1998年 コーンズアンドカンパニーリミテッド
2004年 ニューヨーク大学教育学部スタジオアーツ写真専攻 修士課程修了
2004年 クリスティーズ(NY) 日本・韓国美術部門
2007年 クリスティーズ ジャパン
アジア現代アート及び NY・Londonのコンテンポラリーアート
個人コレクターを中心に美術品全般の出品/落札に携わる
2019年 株式会社アマナ ARTshelfプロジェクト
2021年 大胡アートアドバイザリー合同会社 設立